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008 海外衛星放送受信 〜 インテルサット8(元PAS8)でNHKの国際放送を見る
大畑電機製作所 パラボラアンテナ

2006年 6月 3日

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NHKの海外向け英語ニュース、「Newsline」です。日本ではINTELSAT8で受信できます。

 
【海外衛星放送への憧れ】

 海外衛星放送ってご存じですか?日本で一般的なBSやCSなどとは違い、もっと広範囲(たとえばアジア・太平洋地域全域とか)を対象とした衛星による放送です。

 もともと20年以上も前、KAY2は学生の頃から海外衛星放送を受信したいという思いは持っていました。インターネットがまだなく、スカパー!もなく、そしてBSもなかった時代、英語のテレビ放送は今ほど簡単に視聴できず、Cバンドといわれる大きなアンテナで受信できる海外衛星放送は本当に魅力的だったのです。当時私は英語のテレビ・ニュース見たさに、毎日放送していたテレビ神奈川(JCTV製作でした)の英語ニュースをUHFアンテナを向けて見たりしていました。また、銀座の語学学校でアメリカCBSのニュースのビデオ・テープを見せてくれるところがあり、お金を払って見に行ったりしたこともありました。でも、もっともっとたくさん見たい!それにはCバンドしかない!
 でも、当然、資金はないし、当時は、まだ機材もそれほど出回っていませんでした。

 その後、三才ブックスから毎年のように出ていた海外衛星受信関連のムック本を何年か買い、やはり視聴したいという思いは強くなるのですが、現実を考えると東京の狭いアパートではアンテナを設置するなど思いもよらないことではありました。

 数年前、仕事仲間の友人(師匠と呼んでます!)が、120センチのディッシュを自力で立てて、アジアサットなどを受信しはじめたのを聞き、ついに、気持ちを抑えることが出来なくなりました。ありがたいことに関連の機材の値段も昔と違い相当安価になってきています。

 もちろん、東京ではアンテナを立てる場所がありません。そこで実家で!と思いつきます。

 さらに、もう一つ、好都合な目的ができました。実家に住む家族がなぜか(!?)NHKの国際テレビ放送、「NHKワールド」を見てみたいと言ったのです。これでいい理由ができました。NHKワールドはINTELSAT8(当時はPAS(パンナムサット)8号機と呼んでいました)という衛星を使用しています。


【自分たちでやってみるが・・・】

 で、2004年の夏、インターネットで120センチのアンテナとチューナーのセットを購入。値段にして5万円前後でした。実家の家族総出でアンテナを組み立てて、設置しようと電波を探ったのですが、これが全く受信できないのです。おまけに中国製のチューナーは購入当初から不具合があり、操作が非常に煩雑でした。2日間頑張ってみて結局だめ。とても悲しい体験でした。

 その後、自分たちで設置することをあきらめ、なにか良い方法はないかと情報収集を細々と続けること2年。やっと今年、となりの広島県にある業者さん、「あい工房」さんを見つけ、コンタクトをとって、工事を依頼することになりました。私の手持ちの機材で受信テストをした上で設置作業を請け負ってくださるというのです。

 メールでやりとりをしてみるととても丁寧な対応をしてくださり、いろいろと教えていただきました。その中で、手持ちの120センチのディッシュでINTELSAT8を受信しても、とりあえず受信はできるけれど、安定した状態での受信が難しい場合があるなどの説明がありました。PAS8は大変電波の強力な衛星なのですが、毎日楽しみたいという場合、安定第一と考えると、ディッシュは大きい方がいいようです。あらためてインターネットなどで調べてみると、その通りです。うーん、基本の「き」も知らなかったんですね、私たち。

 それで、あい工房さんが取引のある台湾のメーカーから安価に160センチのパラボラを取り寄せてもらい、工事をしてくださることになります。私もその日には東京から実家に帰ることに。あとは天気が晴れてくれることを祈るのみです。

 とはいえ、後で考えてみると160センチのパラボラって、相当な重さ。台風などを考えるとあまり嬉しくはありません。心の中でちょっと躊躇します。で、インターネットなどで調べてみると日本の大畑電機製作所がメッシュのものを作っているようです。こちらはとても有名なメーカーで名前は以前から知っていました。全体が網の目になっているので、これなら軽量で、風にも強い。製品も高品質。これを購入して工事をお願いしようかと一瞬思うのですが、こちらは値段が台湾製とは比較にならないくらい高いのです。うーん、結果、尻込みしてしまいました。やっぱり台湾製でいいかな・・・。

 ところで、自分が実家にいるわけでなく、また実家の親とあい工房さんが直接話をするわけでもないので、なかなかうまく情報が伝わっているかどうか不安なものです。なかでも、実際に工事をするのに、たとえば、どこにアンテナをたてたらいいかとか?今回、家の見取り図と写真を十数枚送って検討してもらいました。こうした情報の共有は重要だったようです。そのおかげで、どこにアンテナをつけるかも、事前に決定することができ、工事に向けての不安はなくなりました。


【紆余曲折】

 ところが、工事を数週間先にひかえたある日、あい工房さんから突然携帯に電話が。

 「困りましたよぉ。台湾のメーカー、先月末でパラボラの生産をやめたんですって。昨今、海外のテレビ視聴がどんどんインターネットにシフトしてくだろうと見越して生産をストップしたらしいんですよ。先方から回答がきてビックリです。」

 これには参りました。あい工房さんも「残念ですが、この計画、なかったことにしましょうか・・・」と言われるのですが・・・。

 でも、続いてあい工房さんから思いがけない言葉が。「ほかに取引があるのは大畑さんという会社なんですが、ここは値段が台湾製にくらべるとえらく高いんですよ。おまけに、そちらは160センチがないので、180センチになっちゃいます。それでよければ、そこに発注する手もあるんですが・・・でも、値段がねぇ・・・」
 なんと、まるでこちらの心の中をのぞき見ているかのような展開です。
 実は、これも偶然なのですが、数年前から持っていた某大手金属株が大化けして、それを数日前に売り、臨時収入があったばかり。いったんは尻込みしたはずのアイディア、あい工房さんの一言で思わず「あ、我が家の財務大臣と相談してみます!」となっちゃいました。

 KAY1(財務大臣)、きびしいです。

 「それで、そのアンテナが大きくなって値段が高くなって、そうなると、もっと多くの放送が入るとか、そういうメリットでもあるの?」

 と尋ねてきます。うーん、どうせ受信するのはINTELSAT8だけだから、それを受信するかぎりは違いはないんだけれど・・・。そんなことを言うと、即、却下されそうです。

 「うんうん。アンテナがメッシュで軽くなるからね、簡単に動かせて、それでたくさん放送が受信できるんだよ」と思わず口から出てしまいました・・・。

 でも、結果的には、その通りだったんですが・・・。

 ようやく財務省の許可がおり、あい工房さんにお願いしました。あい工房さんからは頻繁に現在までの進捗状況、アンテナが届いたとか、実際に受信してみたとか、メールで報告がはいります。どうもすべて良好に行っているようで安心です。


【いよいよ帰省&工事】

 仕事の合間を縫い、夜勤明けでそのまま東京駅に向かいます。新幹線と特急を乗り継いで実家へ。距離ではなく時間換算だと、多分、日本で一番東京から遠いかもしれないところに我が実家はあります。到着したのはもう日も暮れた時刻。その日は両親と久しぶりに酒を飲みながら話をしますが、夜勤の疲れかそのうち意識不明に・・・zzz。

 翌日はよく晴れました。おまけに風もほとんどなし。絶好の工事日より。

 午後1時頃にあい工房さんは到着予定ですが、12時45分に我が家に電話が。あい工房さんかな?と思ったのですが、父親が出ると、彼の幼なじみだったのです。久しぶりの電話だそうです。なぜ急に?といぶかしがると「あんたの家に行きたいって、道を聞いてきた人がいてね、ものすごいでかいアンテナを積んでいたよ。何あれ?」

 さっそく人々の好奇心を刺激したようです。

 やがてあい工房さんから直接道を尋ねる電話が。もう数百メートルの距離に来ているようです。、ほどなく、我が家に到着です。

 トラックの荷台に白く輝く大きなアンテナが・・・。これは目立つ。うん。近所の話題になりそうです。さっそく実家の前の道を行く車は皆スピードを落として通過していきます。みなアンテナを凝視していきます。これは近所どころか市全体で話題になることでしょう。

 あい工房さんはお二人でみえました。アンテナが120センチ程度ならお一人だそうですが、このクラスになると1人では作業は無理なのだそうです(ホント、その通りでした。アンテナ、メッシュとはいえ、このクラスになると重いです)。

 私たちもお手伝いしながらアンテナをおろします。そして、まずは庭の穴堀り。もともと砂地であるせいで、ずいぶん手早く80センチほどの穴が掘れます。さすがプロ、と私たちは眺めています。そこにコンクリートブロックを入れ、その穴に、ポールをたてます。そしてセメントで固めて・・・。実に手早い作業です。

さすが専門の業者さんです。あっという間に穴を掘って、すぐにポールを建てます。

【衛星受信】

 ポールも無事に建ちアンテナをとりつけ、3時頃にはチェックのための受信を始めます。まずは信号が強く受信しやすいASIASAT3S。DW(ドイチェヴェレ)にチャンネルをあわせ、パラボラを少しずつ動かしていきます。あい工房のお二人、手慣れたものです。仰角をあわせ、続いて方位角を。ゆっくりとアンテナを動かすと、あっけなくDWが入感。ドイツ語がテレビから流れてきます。3時になると英語に変わりました。そう、DWは時間によって言語が変わるのです。そして、チャンネルを変えるとアルジャジーラ(PRチャンネル)が映ります。

 ところで、このままアジアサットを楽しんでもいいのですが、あくまで目的はINTELSAT8です。

 今度はチューナーのチャンネルをNHKワールドにして、アンテナを動かします。

 ところが、これがなぜかうまくいきません。仰角、方位角、ほぼ間違いないのですが、なかなか入らないようです。あい工房のお二人は何度も何度も我慢強く試してくださっています。が、なぜか入感しないのです。

 試行錯誤の末、結局、「おかしな事態」が発覚します。

 NHK以外のチャンネルにチューナーを合わせて、アンテナを回すとあっけなくINTELSAT8を捕まえることができたのです。つまり、中国のCCTVや韓国のARIRANGなどが簡単に受信できたのです。つまりINTELSAT8は無事捕捉できています。

 でも、NHKワールドはなぜか受信できない!いや、シグナルは入っているのです。それが証拠にシグナルメーターは振れています。ところが、映像、音声が出てこないのです。

 「今日はNHKさんはお休みかな?」とまんざら冗談でもない気持ちのこもったつぶやきがお二人から聞こえてきます。

 それから試行錯誤すること2時間。ついに時間切れです。これ以上作業すると暗くなってしまいます。

 あい工房のお二人、実に、申し訳なさそうな表情です。「目的の放送が受信できないなんて。でも不思議、INTELSAT8の他のチャンネルは全部受信できるのに・・・。とにかく広島に帰ったら調べてみます。」

 工事は一応完了。INTELSAT8もとらえました。でも、目的だったNHKは失敗。ふー。とため息がでます。でも、仕方ないですよね。私が見ても、間違いなくINTELSAT8をとらえています。受信機もアンテナも正常に作動しているようです。どう考えてもNHK側の問題としか思えない。もしかしたら何かの事情で放送がダウンしているのかもしれません。

 お二人に東京からのおみやげを渡して丁寧にお礼を言っておきます。お一人は裏山で「ふき」をみつけてほくほく顔。「これはこれはめずらしいものをみつけちゃいました!」何本も持ち帰られましたが、その後おいしく召し上がることができたでしょうか・・・。(^o^)

こうして、実際に受信しながら、アンテナの方向をチェックします。

【突然の解決】

 失意のなか、食事を終えて、酒を飲みながらCCTV9を見ていました。夜10時をまわったころ電話が鳴ります。あい工房さんからでした。「わかった!わかりましたよ。解決方法。インターネットを見ていたら、なんとNHKワールド、シンボルレート(普通のテレビでいえば、チャンネルの1とか3とかという数字と同じくらいに重要な数字です)が今月半ばに変更になっていたんです。前回チェックしたときは前のシンボルレートで受信して、それがチューナーに設定されていたから受信できなかったんです。それにしても、NHKさんはそういう肝心なことはもっと大々的に宣伝してくれなきゃ!!!」

 そーでした。実は4月頃、NHKのサイトでもシンボルレートの変更は告知されていて、自分も目にしていたはずなんです。ところが、そのときは、それがアジア地域のINTELSAT8でなく、ヨーロッパ地域のINTELSAT10の変更だと勘違いしていたのです。そうでなければピンときたのに!!

 すぐにあい工房さんのおっしゃるとおりの作業をチューナー相手にしてみます。が、いかんせん、リモコンが使えず、おまけに、機嫌が悪いとすぐに電源が切れてしまうめちゃくちゃ品質の悪いチューナー。言われた作業がうまく行きません。何度も後ろの電源を切ってリセットしたりします。結局1時間以上すったもんだして、最終的に無事シンボルレートを変更したら・・・。

 「BSニュース」が画面に現れました。左上に・・・しっかりと赤い色の入ったNHKのロゴマークが入っています。赤のロゴは「NHKワールド」特有のもの。やった!受信できました。BSニュースに続いてワールド独自の番組、英語による時事解説番組が・・・・。

 もう11時を過ぎていましたが、すぐにあい工房さんに電話を入れます。心臓がドキドキと鳴っています。「やりました!映りました!!」「よかった、よかった!」双方共に叫び声になっています。

 
【海外衛星放送の中身】 
 
 その後、じっくりと各チャンネルを見てみました。シグナルとしてはテレビ、ラジオともにそれぞれ80チャンネル以上入感しますが、ノンスクランブルで実際に映像を見ることが出来るのは20チャンネル弱です(アジアサットであればもっと大量に受信できるのですが)。いずれも大変綺麗に映ります。実家のある場所は「ド田舎」なので、地上波はすべて中継の中継のまた中継で、NHK総合でさえも相当に汚い映像なんです。それに比べると大違い。大画面で見ると改めてその画像の美しさに息をのみます。とはいえ、mpeg2の圧縮をかけていますから、いくつかのチャンネルではスポーツなど、ややコマ落ちしたような映像になるのは仕方ないのですが・・・。
 
 個人的に興味があるのは英語放送なので、中国のCCTV9、韓国のARIRANG、イギリスのBBCワールド、オーストラリアのABCなどを見てみます。
 
 中国はスポーツニュースが非常に充実しています。多分、北京オリンピックをにらんでスポーツ報道を相当強化しているのでしょう。とはいえ、スポーツの映像というのは放送権料が非常に高額。それをバンバン国際放送で流していると言うことは金を湯水のごとく使っているに違いありません。国家事業ならではです。が、一方で、ニュースを見ると、冒頭で党要人のスピーチを延々と編集もせずに流すなど、いかにも「国営」放送という感じです。またかつての共産国家的放送をも思い出させます。そのスピーチ、5分続くところまでは我慢して見ていましたが、7分を過ぎたあたりで眠くなったのでチャンネルを変えちゃいました。

 韓国は公共放送KBSと民放の番組を集めているそうで、確かに、中国に比べて多彩な番組が流れているようです。とはいえ、英語化するにあたり字幕で対応する部分が多かったり、結構予算的には苦し紛れに頑張っているなぁという印象。

 BBCはいつもスカパー!で見ているので同じですが、日本語音声がはじめから付加されています。実はこの日本語、日本ではなく、ロンドンに通訳集団がいて、そちらで付加されています。それで、INTELSAT8でも日本語つき(副音声が英語です)で見ることができるというわけでしょう。スカパー!は有料。こちら、INTELSAT8は無料。アンテナをたてるのに問題のない方は、ぜひINTELSAT8でご覧下さい!

 ABCはちょうど見ていると映画俳優アンソニー・クインのドキュメンタリーを放送しています。なんで?と思っていたのですが、エンドクレジットを見て、またもや「なんで?」・・・というのも制作はBBCだったんです。もともと大英帝国のなごりで、ABCはBBCの放送権も持っているらしいのです。で、こうして国際放送でもBBCの番組を流すことができるようです。そういえば、その後でABCシドニーとカナダのCBCバンクーバーの二人のキャスターが司会進行する時事番組(Hemisphere)を放送していました。これもかつての大英帝国つながりなのでしょう。ABCとCBCも関係は濃密です。

 そして我が国のNHK。上記の各放送局にくらべて遙かに「わずかな」予算で頑張っています。みなさん、我が国の顔です。今後の発展を祈って応援しましょう。(^o^)

 で、私の場合は英語中心ですが、もしも中国語を理解できる方なら、他にたくさん中国語チャンネルがあるので、きっと、もっともっと楽しめると思います。

 我が実家に登場した海外衛星放送受信システム。今後の活躍が楽しみです。

ついに180センチのアンテナが建ちました。近所の話題になるのは間違いないでしょう・・・。(^▽^ケケケ

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