HOME > モノ・インプレッション・トップ > 036 SACDで聴くカーペンターズ ~オリジナル録音に近いカレンの歌声~ CARPENTERS SINGLES 1969-1981

036 SACDで聴くカーペンターズ
~オリジナル録音に近いカレンの歌声~
CARPENTERS SINGLES 1969-1981

2011年12月 3日
追記:2014年 3月 6日

このサイトはフレーム対応となっています。
フレーム機能つきのブラウザでご覧の方はこちらをクリックしてください
そうでない方はこのままご覧下さい。



これがやっと手に入れたSACD。同じデザインで通常のCDも出ています。ご注意を。
SACDは左側帯の部分に記載があります。



以前、この「モノ・インプレッション」に高音質のメディア(CD)であるSACD(スーパー・オーディオ・CD)について、サラウンドシステムの関連で、一言書きました。(こちらです…。最近はあまり話題になっていないSACDですが、実際に録音を聴くとあまりの音の違いに言葉を失うほどです。どうしてこれほど素晴らしい規格が広まらないんでしょう?KAY2は自信を持ってSACDをオススメします)

今回はそのSACDで聴いたディスクのうち、KAY2がモーレツに感動したディスクを一枚だけご紹介しますね。いや、最初聴いたときは涙が出てきたのです。そして、数年して、今現在、何度も何度も聞いているのですが、やはり感動してしまいます。

カーペンターズというアメリカのグループをご存じの方も多いでしょう。70年代に日本も含めて世界中で大人気。その後、90年代にも日本ではドラマの主題歌に使われたことで再び人気に火がつきました。70年代当時、当時流行っていたメッセージ・ソングでなく、ひたすら音楽的な美を追究したラブソングを作り、歌い続けたカーペンターズは批評家達からはボロクソに言われたものですが、時が経ってみてその真価が広く理解されるという典型のようなグループでした。当時は本当に「ファンだ」なんて言うことが「はばかられた」程です。

中学生だったころ、友人とこんな会話をした覚えがあります。
「おい、KAY2、音楽は何が好きなんだ…」
「うん、カーペンターズ。」
「は?なんだって?おめぇ、恥ずかしい事、言ってくれるじゃないか。」
「だって、いい音楽じゃないか」
「ばか、きさま、それでも一人前の中学生か!カーペンターズじゃ、さまにならんだろ。もっと、社会を変えようとか、政治を変えようって音楽じゃなきゃだめなんだよ。」

そんな時代でした。そりゃ、社会を変えようという音楽も大切だよね。わかるよ。でも、いいモノはいいんだもん!!!こんな見事なハーモニーやオーケストレーション、そして、見事なボーカル、どうしてみんな認めないんだろう…。いいんだ。俺だけ理解できていれば。男子はカーペンターズを聴いてはいけないなんて、そんな世の中の流れには従わないゾ…。

そっか、思い返せばKAY2の反骨精神、カーペンターズによって培われたんだ…、ま、それは大げさですが…。

KAY2が生き甲斐にしているクラシック音楽以外で一人、あるいは1グループだけアーティストを選べといえば、迷うことなくカーペンターズになります。すべてのアルバムを持ち、すべての曲を覚え・・・並じゃない熱中ぶりでした。文字通り「のめりこみ」ました。彼らの活動が停止してからも再発売などのCDを買ったり、ネットで最新の情報を得ていました。

ところが、5~6年ばかし、カーペンターズとはすこしご無沙汰し、インターネットでの情報収集も休んでいたころがありました。だいたい休んでいる内に重要な出来事があるものです。(-_-;)

ある日、久しぶりにネットでカーペンターズの情報を・・・と見ると、アメリカでカーペンターズのSACDが2004年に発売されていたと知ります。以前書いた通り、KAY2は数年前にSACDプレーヤーを買い、そのすばらしさに圧倒されています。SACDでカーペンターズ!おお!!どうしても手に入れたい!!!と思ったのですが、時すでに遅く、タワーレコードやアマゾンなど、輸入CDを扱う国内の業者では手に入りにくくなっていました。オークションで出されていることもありますが、その時には目玉が飛び出る値段で取引されていました。

カーペンターズをお好きな方ならご存じでしょうが、ボーカル担当であったカレン・カーペンターが拒食症で1983年に亡くなった後、彼らのCDはその後、何度も何度も再発売されて出されていますが、実は、カレンの兄で作・編曲家であるリチャード・カーペンターは、音質に強いこだわりを持った方で、再発売されるたびにリミックスをやり直し、どんどん音を新しくしてくれています。これはカーペンターズの音楽がアナログ時代に、すでに最先端のマルチ・チャンネルでの録音をしていたことから可能になったものです。

編曲を変えてしまうと古くからのファンはいやがるでしょうから、わずかな変更(これを探すのも楽しいものです。少しだけピアノのイントロのテンポが変わったとか・・・「Bless the Beasts and the Children」・・・)はあるものの、基本的にはオリジナルに忠実に、それでいて、音がどんどんきれいになっていく・・・。70年代のヒット曲もそのおかげで、現在発売されているCDを聴くと「これって新しく録音しなおしたの?カレン、生きてたの??」となります。

つまり永遠に色あせないわけなんです。

それがさらに高音質をうたうSACDではどう変わったのか!これは大いに期待できるじゃないですか。

そして、しばし情報収集した後、ネットで未開封の物がリーズナブルな値段で出品されているのを発見し、購入しました。

で、オーディオセットの前に座り、SACDをかけてみます。ハイブリッド盤ですが、プレーヤーは自動的にSACDマルチチャンネルでスタートします。最初は彼らの5枚目のアルバムからの大ヒットとなった「Yesterday Once More」。

ピアノの和音が3回鳴るとすぐにカレンの声が出てくるのですが、そのカレンの声にびっくりします。

あ!これは懐かしい昔の音じゃないですか。全身に鳥肌が立ちます。そう。若い頃にレコード店でアナログ・レコードを買ってきて、針を落としたときにステレオから聞こえてきた、あの音に近いのです。

最近のクリアなリミックスではカレンの声は、高音域をやや強調し、非常にダイナミックレンジの広い音で、しかもリバーブがかなりかかっていますが、元々のアナログ時代は、ややダイナミックレンジは狭く、今から見ると高音の伸びない音ですが、暖かみのと芯のある声で、これがとても心地よさを醸し出していました。リバーブもそれほどかかってはいませんでした。そして、このSACDの録音はまさにそのアナログ時代に記憶しているカレンの声に近いんです!

全般に、CD時代の録音特有である不自然なくらいに伸びる高音域をカットし、とても上品な高音を聞かせ、さらに全体に音の芯があり、まごうことなくアナログ的なSACDの良さを持っています。

このアルバムのリミックスに関しては、最近のコンピレーションに見られるオリジナルとは異なる響きの部分が多いですが(最初の「Yesterday Once More」もピアノはオリジナル録音ではないようです・・・イントロのピアノ、2音目にペダルを踏む音のような音が入っているのがオリジナルだと考えれば…)、全般にオリジナル・アナログ録音のイメージが強く蘇るのはボーカルのリバーブを減らしたことと、さらに、SACDならではの音の密度の濃さによるものでしょう。リバーブを減らしたのは、おそらくマルチチャンネルで後ろからの音声が使えることを意識したのだと思います。確かに、そうであれば、必要以上にリバーブをかけなくても、同様の効果は得られるのでしょうし、しかも、不自然さがなくなります。そうか、これをリチャードはホントは目指していたんだな…。それが、時代の技術で当時はできなかった…。そんな風にも思えてきます。

通常のCDと違い、SACDはアナログに非常に近い音の密度の濃さを持っています。KAY2は通常のCDを長時間聴くと頭が痛くなることがあるのですが(特に酒を飲みながら聴くと…。聴き疲れでしょうか)、SACDではそれがありません。もちろんアナログ・レコードも疲れません。というわけで、SACD、大好きなメディアです。これで大好きなカーペンターズを聴くことができて、しかも、オリジナルのアナログレコードの音作りに戻してくれるなんて・・・。

上記のようにリミックスで音が新鮮になるのは良いのですが、オリジナルの響きと異なってしまうことを残念がるオールドファンも多いと聞きます。そうしたファンのことをリチャードは気にかけてくれていたのでしょうか。このSACDへの当初の期待を良い意味で裏切ってくれました!

とはいえ、当然のことながら、このメディアの特性を活かしたマルチチャンネルならではの面白い試みも随所にあり、実はオリジナルと異なる部分も用意されています。

このディスクはハイブリッドなので、通常のCD録音、SACD2チャンネル、そしてSACDマルチチャンネルと3種類の録音が入っています。上記のボーカルの音質はSACDマルチチャンネルの時だけにあてはまりますので、ご注意を。つまり、通常のCDトラック、またSACD2チャンネルでは今までと同じリバーブを効かせたボーカルになります。もちろん、それはそれで良い音であるのは間違いないのですが。

大好きな音楽で最高に幸せな一時を、このSACDをかける度に過ごすことができます。

リチャード・カーペンター氏に大感謝です。そして、もしもあなたが熱烈なるカーペンターズファンならば、このディスク一枚だけのためにSACDのシステムを揃えても、決して後悔はしない…はず…かな?。(笑)


ご注意:
上記にもあるとおり、このアルバム、SACDのハイブリッド盤と通常のCD版が存在します。アルバムジャケットのデザインもほとんど同じです。購入されるときにはご注意ください。
また、SACDも二種類出ています。KAY2の購入したのは曲数の多い~1981の方です。



追記:
2014年4月23日、ついにSACDが国内発売されました。曲数の少ない「シングルス 1969~1973」ですが、ボックスに入った紙ジャケット仕様という嬉しい企画です。但し、上記最大の魅力であるマルチトラックではなく2チャンネルのみです。またハイブリッドでないので、通常のCDプレーヤーで再生できないのも残念です。でも、さすがに素晴らしい音ですし、カレンの声が以前よりオン気味になり(リバーブが目立たなくなりました)、オリジナルのアナログサウンドのイメージが復活しているのも嬉しいですね!



上記のように久々に待望のSACD、
2014年に国内発売です。



このレビューでとりあげたのはこちら。
中古市場の値段は結構変動しますので、うまくすると
安い時期に購入できたりするかもしれません。



SACDも再生できるブルーレイプレーヤー…。安くなりました。


こちらもそう。プレーヤー関係で定評のあるDENONです。


次ページ

TOPへ

KAYSトップ

inserted by FC2 system