HOME > モノ・インプレッション・トップ > 005



005 初めてのネット・オークションとICF-6800A
SONY ICF−6800A

2005年9月11日

このサイトはフレーム対応となっています。
フレーム機能つきのブラウザでご覧の方はこちらをクリックしてください
そうでない方はこのままご覧下さい。

やっと手に入れたSONYの名BCLラジオ、ICF-6800A。格好いいでしょ?

 

ICF−6800Aといえば、SONYが80年代に出したBCLラジオの金字塔です。8万円ちょっとというお値段には頭がクラクラきましたが、そのどでかい筐体とクールでメカニカルなデザインは、当時ICF−5900ユーザーだった「ラジオ大好き少(?青)年」を十分惹きつけるものがありました。また音質がいいとの評判も魅力的でした。

田舎から上京するときに、父親から、BCLラジオを「餞」に買ってもらうことになりました。ひそかに、この6800Aの前の機種、ICF−6800を希望したのでしたが・・・値段が値段です。結局、その半分で買えるICFー2001になったのはやむを得ないことだったでしょう。それでも、当時は大金です。よくぞ貧乏な我が家で買ってくれたものです。息子の「英語」にかける情熱をくんでくれたのでしょうか?(NQXは短波ラジオで英語を勉強したクチです・・・)また、ICF-2001は、これはこれで当時画期的な機種(テンキー入力のはしり)でしたが、感度の低さと音質のうすっぺらさから、あっという間に自分の中ではあまり使いたくない受信機になってしまったのは残念でした。

それ以降、結局再び、5900に戻り、そのリッチな音でBCLを楽しんでいましたが、やはり、旧機種。周波数の安定度はPLLシンセサイザー方式にはかないません。長時間の待ち受け受信は不可能。心の中で、いつか6800、そして、その後発売された6800Aを買いたい!との思いが募っていました。

しかしその後、数多くの機種が生まれ、6800Aも次第に見劣りし、実際に自分の使うラジオも、SONYがその後出し、未だにファンの多いICFー2001D、そしてAORのARシリーズと変化していきます。その時々の新しい機種を使い続けて、やがて時は流れて・・・。とっくの昔に6800Aは製造中止。見渡してみると、1980年代後半以降の短波ラジオはハイテクを誇るものの、肝心の「音」に関して、魅力的な機種が少なくなってしまいました。すると、俄然、6800Aを手に入れなかったことが悔やまれます。中古でも・・・と思うのですが、それを手に入れるルートがわかりません。BCLラジオの専門ショップも多くが姿を消し、たまにショップに現れる中古BCLラジオは高値で、しかもすぐに売れてしまい、圧倒的に売り手市場の世界でした。めったに品物は出てきません。店頭でかつてのSONYスカイ・センサー・シリーズを偶然みつけても、その値段に後ずさりしてしまう状態でした。そんな「鬱鬱」とした状態で数年・・・。

ところが、救世主がやっと現れました。ネット・オークション!

インターネットの時代となり、いつのまにか、ネット・オークションではBCLラジオが数多く取引されるようになってきました。初期の頃からネット・オークションには興味があって見ていたのですが、ネットユーザーの裾野が広がるにつれて、出品される品も多くなり、また、値段も、リーズナブルになってきました。

2年ほど前から、照準をあこがれのICF−6800Aに定めて頻繁にオークションをのぞきます。とはいえ、自分自身はまだネットオークションを利用したことがないため、わからないことも多く、最初の頃はとまどいました。「ジャパンネットバンク決済」とは何だ?とか、そんな基本的なことから、チェックを始めます。それにしても、結構学ばなきゃならないルールは多いのですね。自動入札なんてシステム、便利なのですが、最初はとまどいました。

また、出品者の書いた品物についてのコメントも、見ているとネット独特の文法があることが次第にわかってきます。「美品」「極上」とか書かれると思わず必要以上の期待を抱いてしまいますが、写真をみると「あれれ?」なんてことも。どちらかというと「期待を持たせない」書き方をしたコメントの方が真実に近いのだろうなぁと感じます。出品者の評価も参考になります。ただ、どんな評判のいい出品者でもかならず数件は「非常に悪い」とのコメントがついています。最初はそうした評価を見て警戒したものの、次第にこうした評価を多く目にするにつけて、なんとなくわかってきました。コメントの具体的な中身を読んでみると、単なる評価の操作ミスがそのまま残っている場合が多いようです。また、評価者の方がエキセントリックなこともあるようです。たとえば極端に神経質で「ちょっとの傷も許せない!」とか・・・。つまり、おそらく、こうした評価をする人のなかには相当悪質な人もいるのではないでしょうか。なにせ、こうした「非常に悪い」などのコメントをもらう出品者の多くが数百件の取引をし、同時にほとんどが「非常に良い」のコメントを得ているのですから・・・。通常の人間社会と一緒で、「常軌を逸した人」も必ず数パーセントはおり、そんな人と取引せざるをえなくなると、結局、なんやかんやでモメて、「非常に悪い」の評価を一方的につけられてしまう。そんな構図がうかびます。もちろん、中には本当に「非常に悪い」出品者もいるのは確かですから、「非常に悪い」評価を多くつけられている人には警戒が必要なことは言うまでもありません。顔の見えない不特定多数の人を相手にするネットでは、起こりがちな現象かもしれません。

とまぁ、そんなことを考えながら、ネットを定期的に見ているうちに、なかなか良さそうな6800Aが何度か出品されて、そのたびにオークションに参加してみるのですが、どうも、直前になると入札価格が急激に上昇し、自分の予算に合わずにあきらめます。締め切り直前に値段が上がり始めると、自分の心臓がドキドキと高鳴ってきているのがわかります。血圧も多分上がっていることでしょう。もはや「まごうことなき」「中年」で、成人病予備軍の自分にとって、これはちょっとヤバイなと感じます(-_-;)。それに、気分的にハイな状態になり「イケイケ」的な雰囲気にも陥ってしまいます。

ある時、やはり6800Aが出品され、その内容から、かなり良い品だという想像がつきました。そこで、入札。あと数時間というときに、案の定値段が上がり始めます。自分の予算内でどうにか収まってくれ!と祈るのですが、あっけなく、その壁も破られます。しかし、欲しいとなったら、欲しいもの。ついついこの時は、さらに入札を重ねます。結局、自分の想定していた上限の「倍」の値段になってしまいます。そこで、ふと、われにかえり、入札をあきらめます。潮が引いたようにすっと、レースもおさまります。うーん、何なんだろう。もしかして、計画的な値段のつり上げだった???なんてことも思ってしまうようなおさまりようです。他の入札者も私と同じように、我に返ったのかもしれません。でも、とにかく、自分が最高入札額にならず、時間切れ。

どう考えてもその最終落札価格は高額すぎました。終わって落ち着いてみると、落札しなくて「良かった」と思える体験でした。

その後、数回、やはり6800Aにチャレンジしますが、毎度直前で他の参加者に取られ、なかなかうまく手に入れることができません。

そのころKAY1が公私ともにお世話になっているBCLの大先輩が最近ネット・オークションにはまり、よい品を頻繁に落札をしているという話を直接聞きます。それまでなんとなくネット・オークションに対して持っていた「難しい」というイメージを彼が払拭してくれます。彼の話によると、品定めの要は「観察眼」と「考察力」のようです。ただ、一つだけ大きな問題があるそうです。それは「XYL対策」だとか・・・。(^_^;)

そんなある日、6800Aでやや薄汚れているものの、欠損のない品が出品されます。AMやFMに関しては問題なく、SWに関しては一部弱く入感するものの、芳しくないとのコメント。修理が必用かもしれません。それ以外のコメントを読む限りは、大きな問題がない品です。写真とコメントを見る限り、年月相応のくたびれた状態にはなっているようですが、ライトなどは全て点灯しているようで、しかも、そのコメントには親切にも「SONYの古いラジオなどの修理を受け入れてくれるショップ」が紹介されています。出品者の今までの評価も悪くありません。

そこで、値段の動きを見てみますが、期限の当日まで、大きな値動きはありませんでした。相場よりも低い額で推移しています。そこで、あと数時間というところで、入札をしてみます。いままで見た中ではそれほど「極上」というわけではないので、そこそこの値段以上は出すまいと決意して・・・。

さて、そこで、値段を見てみると、やはり、直前ということで、何度か最高額が変化していきます。だんだん自分で決めている上限が近づきます。これを越すとあきらめざるを得ません。安易に、自分から値段を上げることのないように、ひたすら注視します。このあたりは、じっと我慢の心境で、なかなか自分を押さえるのに懸命です。値段はあがりません。いよいよ1時間を切ったところで、少しだけ値段を上げて入札してみます。自動入札で相手が設定した値段は少額のうわのせだったようで、それで自分の入札額が最高額となります。しかし、まもなく、別の人物が最高額となります。様子見です。また我慢・・・。そんな風にしながら、いよいよ締め切り時間直前。よし!とばかりに自分で定めた上限のちょっと下の額を入れておきます。あとは運を天に任せて。「だめならだめでいいさ!これからもチャンスがあるし!」とそう思います。実際、いままで相当数の6800Aが出品されています。事実なのです。それを意識して、「熱く」ならないように気をつけることが、スマートなオークションの秘訣かもしれません。

さて、ふたを開けてみると・・・。
無事、初めてのオークションでの落札が決まりました。まぁ、うれしかったこと、うれしかったこと。その夜は思わず祝杯をあげてしまいました。

AC電源使用時、暗くしてみると、ごらんのようにライトに照らされているのがわかります。
明るいときにはアルミのように銀色に輝いていたドラム状の周波数表示もオレンジ色に!
この不思議な感じがグッドです。そして手元ライトもあり。心くすぐる小技に涙が出ます。

翌日お金を振り込み、出品者と何度かメールをやりとりしました。非常に丁寧なメールを送ってくださる方で、自分が気になっていたレストアについても具体的で貴重なサジェスチョンをいただいたりしました。こんな風に出品者と情報のやりとりをするとは思わず、意外なコミュニケーションにうれしくなりました。

品物も指定通りに届きます。梱包も完璧。梱包をときながら「こんな風に自分も出品して梱包できるだろうか?」と自信喪失したくらいです。出品者の住所と名前を見て納得。なんと電気屋さんのようでした。本業だったのですねぇ。どうりで・・・。

取り出してみると・・・予想通り、相当に経年変化を経て、プラスチックの表面やつまみはかなり汚れています。このあたりは、写真で想像したものよりはずっと汚れている状態でした。しかし、コメントにあったように、欠損なし。取り扱い説明書などはないので、とりあえず、スイッチを入れてみると・・・。コメント通り、FM、AMともに感度良し。さぁて、肝心のSWです。アンテナにはSONYのBCLラジオには珍しく50オームのMコネクタが使えます。接続して、受信してみると・・・。ノイズ以外、ほとんど入感しません。VOAを受信しようとすると、どうにか聞こえてきますが、シグナルが弱く、また、ボリュームも小さく聞こえます。やっぱり、短波は駄目だったか!修理が必用だなぁ・・・。と実感します。でも、これはコメントに書かれていた通り。ですから、失望というよりはちょっと悲しい「確認」作業でした。

ところが、前面のパネルを眺めていて、自然と表情がゆるみます。「PRESELECTOR」と書いてあるつまみを見つけます。なぁんだ、プリセレクターがついていて、周波数を合わせるんだ!説明書がなかったので、それに気付くのが遅れました。あれほどあこがれの機種でカタログを眺めていたのに・・・。そこで、VOAの周波数と同じ9.7MHz付近に周波数にプリセレクターのつまみをあわせると・・・ゆるんだ表情が満面の笑みに変わるのが自分でもわかります。そう。実に強力に受信できるようになったのです。それから、いろんな放送局を聞いてみますが、実にパワフルに音が聞こえてきます。そう。SWも完璧な状態だったんです!多分出品者もPRESELECTORのことを知らなかったのでしょう。だからSWの受信は問題ありとして、そのために落札価格も低かったわけです。なんという幸運。短波ラジオは愛好者以外には使いこなしが難しいモノ。結構、同じようなラッキーなケースはあるのかもしれません。

改めてすべての機能を見てみますが、すべてOKです。そこで、つまみ類を中心に、本体からはずして、使い古した歯ブラシと洗剤で少しずつ洗っていきます。すると、汚れはかなり落ちて、ずいぶんきれいになりました。

こうして眺めていると、本当にうれしいもの。ちょうど田舎の実家に夏休みで帰ることになっていたので、借りてきた自動車に積み込みます。

山の中にある実家は住んでいる東京とちがってノイズが圧倒的に少ない環境です。25mの長さのT2FDアンテナをつないでみると、実によく入感します。音も、近年のBCLラジオ特有のうすっぺらい音とは大違いです。長年愛用してきたICF−5900のような低音域を強調した丸い音(これはこれで聞いていて心地よく、聞き疲れしなくて良いのです。短波放送を聴きながら眠りにつける唯一の機種では???)とはやや違い、低音域はやや不足気味ですが、中音域から高音域がのびて、メリハリのある音がします(追記:愛用のヘッドフォン、SONYのMDR−Z600をつないでみると・・・とてもリッチな音に驚きます。オーディオ的に素晴らしい音を聞かせてくれます。スピーカーだけでなく、ぜひ、ヘッドフォンで聴いてみてください!!!)。虫の音をバックグラウンドに短波放送に聞き惚れた数日を過ごすことができました。それも長年の憧れだったBCLラジオで・・・。四半世紀にわたる夢がかないました。オークションに、そして出品者に感謝です。

次ページ

TOPへ

KAYSトップ

inserted by FC2 system