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034 試聴会の魅力と憧れの今村智さん
JVC(日本ビクター) EX-AR9
(EX-AR7のプレミア機)

2011年 8月30日

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徹底して木にこだわった JVC EX-AR9。
ウッドコーンスピーカーのフラッグシップモデルです。





ご注意:KAYSはモノフェローズではありません。(笑) だって、そんなにアクセス数はないもん。(爆)



【試聴会のお知らせ】

ある日、新聞を見ていたKAY1が、ニコニコしながらKAY2に話しかけます。

「ねぇねぇ、この広告見て!ビクターが新しいミニコンポを発売するんだって。でね、その試聴会があるそうなんだけれど、なんと、ビクター・スタジオでするんだって。普段非公開のスタジオだし、無料で先着受付順ですって!」

普段それほどオーディオには興味のないKAY1、何でこんな事を言ったのかといえば理由があります。実は先日ブログに書いたFS-1というミニミニコンポ、これを買った時に(十数年前ですが)、すっかり気に入り、良いオーディオ製品は持つと幸せになれるということを感じたそうなんです。ただし、女性らしく一言おまけにつきます。「”安くて”良いオーディオ製品だからね。そこのところよろしく」。(笑)

で、ビクタースタジオといえば、昨年、NHKの紅白歌合戦でサザンオールスターズの演奏していた場所。普段は我々が足を踏み入れることのできない音楽の聖地。そこに無料で入れるだなんて…。これは、絶対体験したい。

ついでに言えば、ベッドサイドの「極上オーディオルーム」ともいえるFS-1、すでに購入して十数年がたち、そろそろ後継機種を…と思い始めていたこともあります。

すぐに電話で予約をしたところ、3回開かれる試聴会のうち2回はすでに満席。最後の会に滑り込みセーフ。


【行ってみた】


音楽の聖地、ビクタースタジオです。
意外にも外見は殺風景な倉庫風。


日曜日の午後、神宮前にあるビクタースタジオにやってきます。入り口にあの、トレードマークのわんちゃん「ニッパー君」の像が。おお、これです、これです。で、受付を済ませて会場に入ります。意外と年配の方が多いようです。室内で音楽が流れ始めます。これが、今回の商品、EX-AR9から流れてくるのですが、ボーカルの密度、そして、美しさに思わず聞き惚れてしまいます。うわ、こりゃ、すごいぞ。

そして、やがて、営業担当者から簡単な自己紹介のあと、企画担当に移り、商品のコンセプト説明。そして、開発を担当した方にバトンタッチ。あれ、この方、もしかして?うん、間違いない!今村智さん。そう、ビクターのシニアエンジニアで、ウッドコーンスピーカーという、通常は紙を用いるスピーカーの振動板を何と木で作ってしまった方。そして、KAYSが愛用しているFS-1の開発者!うわぁ、ご本人だぁ!

嬉しくなって、思わず話を聞きながら心が弾んできます。

説明を一通り聞いた後、今度は視聴。実際にスタジオのミキシングルームに行き、そこで、マスタリングの実際を見ながら、視聴するという面白い試みです。こちらでは、EX-AR9をミキシング卓の上に置き、通常使う壁に埋め込まれた巨大スピーカーと聞き比べをするという大変に面白い試みです。しかも、ミキシングという我々が日頃なかなか目にすることの出来ない技術をわかりやすく、説明してくださいます。高田さんというミキシングの大家による説明です。実はミキシングの担当者も、現場の声ということで、この製品開発に協力していらっしゃるそうなのです。

それにしても、みなさん、自分の仕事が好きで好きでたまらないという雰囲気です。それに、面白いんです。皆さん、タイプがそれぞれ違って。最初の営業担当者はいかにも有名企業の営業という感じで、元気よく、積極的なトーク。企画担当者は、広告業界にいるような、ちょっとシャープで、おしゃれ&クール。今村さんは技術畑らしく、技術の話に熱がこもり、オーディオが好きで好きでたまらないという感じ。さらに、ミキシングの高田さんは、アーチストという感じの雰囲気。4者4様の人々がこの製品の誕生に関わっているというのは面白いですねぇ。そして、皆さん、おしなべて熱弁!


スタジオ長、高田英男さんが手にしているのが「ガラスCD」。その音の違いにびっくり!

さて、そのミキシングルームで、一つ、凄くびっくりしたことがあります。

同じマスター音源から通常のCDにしたものと、ガラスと金で出来ているというCD(価格が1枚18万円で発売中だそうです!)の聞きくらべという贅沢なことをしてくれたのです。で、これがまあ、驚くほどの違い!音の充実感、芯の太さ、そして現実感、音の艶やかさが断然、ガラスCDが上なのです。マスタリングは同じなのに!CDの素材でこんなにも違うとは驚きました。これは都市伝説ではなく、事実です。KAY1がつぶやきます。「私、音の違いなんてあまりわからないと思っていたけれど、これは全然違う!」ちなみに、このときに聞いたのは村治佳織さんのギター演奏。

音質の違いというより、まったく別物を聞かされているという実感です。このときは本当に、驚きを通り越して呆然としてしまいました。もちろん、これはミキシングルームの巨大スピーカーでもそうですが、ミキシング卓の上にちょこんと置かれた本機で聞いて、はっきりわかる違いなのです。

というわけで、この18万円の音楽CD、我々には縁のないモノですが、たとえば、あるアーチストの熱烈なファンならば、一枚欲しいと思うかもしれません。


【技術説明】

さて、予定時間を大幅に超えて、最初の部屋に戻ります。ここからは今村さんによる技術説明です。


あこがれの今村智さん、再び登場!


今村さん、FS-1の愛用者である我々にとっては、神様のような存在です。すでに予定時間を大幅に超えたところから今村さんの解説が始まったので、最初は彼も遠慮がちでしたが、次第に熱がこもってきます。

たとえば…。
・木というのは年月が経つと、逆に強固になってくるという特性を持つ。
・とにかく、木にこだわった。例えば、スピーカーボックスの補強材も、わざわざ木の繊維の向きをあわせて置くことにより、一定方向の音像をさらに広げることができた。
・振動を防ぐためにアンプの天板に木材をはりつけた。実際にアルミだけと木材をはりつけたものを木槌で打って比較する。
・振動を防ぐために、ねじもアルミ、銅と、わざと異なる素材を一緒に使うことによって軽減。

などなど、本当に細かいところまで工夫を凝らした製品作りだということがよくわかる説明です。まさか、そんなところまでこだわっているとは知らず、とにかく、説明の間中、目が点になってしまいました。


そう、ご覧のように、コーン紙が木。これがウッドコーン!

もっと詳しい内容は…実は本記事の最後に書きましたが、今回のイベント、同時にブロガーなどのための試聴会も開催されたようで、検索エンジンで「EX-RA9」と検索すれば、今村さんの説明内容を詳しく記した記事が沢山出てきます。そちらでご覧ください。

というわけで、20分以上も予定をオーバーして話を聞いたり視聴したり…。

最後に、憧れの今村さんと記念撮影までしてしまいました!

ところで、今回のイベント一つとってもびっくりしたことが。建物に入って、スタジオのある階に踏み入れたとたん、ものすごいタバコの匂いなんです。そして数メートルおきに灰皿が。とにかくタバコ「力(りょく)」満載の職場なんですね、音楽業界って。びっくりしました。愛煙家にとっては天国。でも、気管支の弱いKAY2は、結構、ツライ思いをしながらこのイベントに参加したことは正直、告白しておきますネ。いや、音楽業界に就職しなくて本当に良かった!


さて、このEX-RA9、買いたい!と思い、我が家の財務大臣、KAY1に水を向けると…。

「却下」

れれれ?どうして、あんなに気に入った表情で試聴会参加してたじゃない。

「だって、値段を考えてよ。FS-1を買った時の3倍だよ。住宅ローンの残高を考えてみて。」

というわけで、家計からの支出は拒否されちゃいました。あーあ。

でも、欲しい!

ということで、結局、KAY2が結婚してからコツコツと貯めたへそくり。そのかなりの部分を放出することになってしまいました。嗚呼!


【買った!届いた!聴いた!】


ご覧のように Squeezebox Touch との相性が抜群!

1ヶ月後。

ついに届いたEX-AR9、さっそくセットアップして、聞いてみます。

まだまだエージング(スピーカーというのは購入当初はまだ堅い音がします。それが何時間も使用することにより、次第に本来の音を出すようになります)にはほど遠いので、あくまで現段階の良い点と悪い点をリストアップです。


【PROS(良い点)】

・デザイン、KAYS的には好きです。

・音質、派手さはないものの、とにかく、ソースの音に忠実であろうという姿勢が貫かれています。

・木のコーンだからでしょうか、弦楽器はさすがにベストマッチ。中でもチェロの音色が素晴らしい。デュプレの弾くエルガーのコンチェルトを鳴らしたとたん、涙が出そうになりました。

・コンパクトです。それなのに、音のまとまりは実に自然。これは本当に体験して驚きます。

・また中低音は当然、大きなサイズのスピーカーには劣りますが、それでも、かなりの響きを生み出します。特に、本機の場合、ボリュームを上げて聞くと、その効果が驚くほど出てきます。ボリュームを小さくしたまま聞くと地味な音作りで、感動は少ないかもしれません。

・光端子があるので、我が家の便利な Squeezebox Touch とつなぎ、アップルロスレスでエンコードした音楽を聞くと、相当な満足感があります。

・ツイータなどを使わないフルレンジスピーカーの効果でしょうか、とにかく、全体の音のまとまりが良いですねぇ。

・本機に相性がいいのはクラシック、ジャズだけではありません。ある日、BBCの RADIO 2 を聴いていました。おじさん達の世代のポップスがかかるチャンネルです。突然、ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」がかかったのですが、音がとにかく透き通って、密度が濃い!びっくりです。こんなに綺麗な音なんだ!と聞きなじんだ曲を再発見しました。そう。とにかく、音の密度が濃く、耳になじみがいいのです。驚きました。


【CONS(改善して欲しい点)】

・さすがに値段が…結構します。これだけ出せば、実はもっと低音から高音までバリバリ出る機種を買うことができるでしょう。ま、根本の発想が全く違う機種ですから…、これで良いのですが。

・リモコン、かなり多くの機能が詰め込まれていて、操作には慣れが必要です。もっともJVCさんもそれを分かっているらしく、今回、試聴会参加者で購入する場合にはサービスとして簡易版のリモコンを付けてくれました。標準としてこの簡易リモコンもつけばいいのになぁ…。

・原音探求の裏返しですが、録音の良くないソースは実に正直に、ヒドイ音で再生します。下手な化粧は全くしてくれません。

・コンパクトとはいえ、やや奥行きがあります。購入される前にはかならず奥行きのサイズを確認して、自分の置きたい場所に置けるかチェックしましょう。

・本機で再生できるDVDオーディオは我が家ではあまり縁がありません。かわりにSACDが再生できるようにしてくれればよかったのに…。これほどのスペックなので、SACDの再生は相当満足できるはず。JVCさん、ぜひ次回はSACD対応に!!!

・これはワガママな希望ですが、光ケーブルも1本、付属品でつけてくれれば嬉しいのですが…。

・ボリュームの球体つまみ、ちょっと回しにくい。見た目のデザインはいいのですが…。通常の円筒形の方がいいな。

・サイズの限界は認識した方がいいです…。これも当然といえば当然ですが、サイズが小さいが故に、苦手な部分も出てきます。低音は特にそう。ゴージャスなオーケストラの音を聞きたい!となれば、それは別に大きなスピーカーのシステムを揃えるべきで、そうした方には本機はあくまでサブと考えた方がいいでしょう。一方で、小さいながらまとまった音で音楽を聴きたいという人には本機がベストチョイスになるかもしれません。

・そうは言いながら、上記のように音量は大きめにして聞かないと、本機の良さが出てきません。小音量での本機の音作りは地味な印象です。ですから、寝室の枕元に置き、常に小さいな音で聴くという用途であれば、本機である必要はないかもしれません。

こんなところです。トータルで言えばマル。良い買い物でした。財布はイタイけれど。

ただ、一つ困ったことが…。枕元に置こうと買った本機。上記のように、ボリュームを上げれば上げるほど音が輝いてきます。そう、寝室に置くべきではなく、リビングに置いた方がいいなぁと思い始めているのです…。あ、KAY1が睨んだ。

「あんた、これ以上、居間にモノを置かないでちょうだい!!」

くわばら、くわばら。


光入出力を備えているのは嬉しい。これも Squeezebox Touch とバッチリ!
その後ろに見えているように、付属のスピーカーケーブル、気合いが入っています。

【最後に】

ところで、記事の中でも触れましたが、実は事実確認のために、インターネットで本機に関する記事を調べたところ、この試聴会のブログ記事が非常に多いのです。しかも、我々のように遠慮がちに撮った写真だけでなく、堂々と、どう考えてもじっくりと時間を取って撮影した写真も。不思議だなぁと思ったら、どうやら、そうした、インターネットの個人サイトで記事を書くための試聴会が同じ日にあったようです。しかも、そうした記事には WillViiとかモノフェローズと書かれています。そう、こうした企業の製品やイヴェントを企画・支援するモノフェローズというシステムがあることを初めて知りました。イベントを仕掛ける。あるいは無償で商品を貸し出してファンを作る。しかも、それを個人でネット発信させる。企業の商品宣伝というのも、実に複雑かつ巧みになってきているようです。驚きました。

いやはや、そうなると、これは我々KAYSの出る幕ではないかもしれません。

たしかにモノフェローズの記事は個人の意志で発信していますし、それぞれのブロガーが気に入った商品やイベントの紹介になりますから、ヤラセではありません。よく考えついたなぁと感心しきり。とはいえ、やっぱり、こうして自腹で買った商品を紹介する方が、良い点も悪い点も忌憚なく書けるような気がして、なんとなくいいかなぁという感じもするKAYSです。それが冒頭の注意書きを記した理由です。(本当はアクセスが少なすぎて決してモノフェローズになれないKAY2のヒガミです…(笑))


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