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呑んべえふくろうケイの

大陸横断鉄道でカナダを走る!(3)




大陸横断鉄道3日目


現在午前11時20分。セントラル・タイムです。また時計の針を1時間進めました。進めるたびに時間を損しているような妙な気分です。

今朝ほどから車窓の眺めは一面の大平原です。サスカチュワンという唾の飛びそうな 名前の街を抜けて、「カナダのパン篭」とも呼ばれる穀倉地帯を走っているのです。まったく山が見えません。

昨日の寒さはどこへやら。今日は一転暑いので冷房を少しきかせぎみにしています。やっぱり昨日はロッキーの冷たい外気のせいだったんだね。

そうそう、昨日はジャスパーで1時間停車したので、その間に外に出てみました。み やげ物屋が集まるとっても小さな商店街があり、結構みんなそこに向かっていました。日本人客はほとんど、ジャスパーで列車の旅を終えて、ロッキー見物に向かうようです。僕のようにトロントまでというのは、やっぱりいないよね。みんな忙しい旅行だから。

それにしても、凄い眺めでした。小さな街のすぐ向こうに巨大な雪をかぶった山がそびえている。ところが色が緑でなく青いので、実際には相当な距離と大きさがあることがわかります。こんな光景はスイスで見たことがあるっきりです。日本ではちょっとお目にかかれないなぁ。


列車の一番後ろについているドームカーに行ってみると中国語で話しかけてくれた例の陽気なおばあちゃんがいて、再び「ニーハオ」と声をかけてくれます。仕方ないので「ニーハオ」と答えてあげると喜んでくれました。「中国からきたの?」という質問をしてきますので、ここぞとばかり「違うんですよぉ・・・日本」と答えると両手で頬を押さえ、「え????まさか・・・・」。どうも最近日本人に見てもらえない私です。あれほど日本人の典型と謳われた私が・・・・。先週もモントリオールの中華料理店 の中国人のおネェサンに「あなたは中国人か日本人かわからない。どっち?」と尋ねられたし…どうなっているのかな。態度が日本人ばなれしてきたのかな。

 まぁ、とにかくそのおばあちゃんは親戚や知り合いに日本人が非常に多く、彼女自身も日本に行ったことがあるので、ほぼ間違いなく僕は日本人じゃないと判断したのだそうです。「あなたの顔を見ているとね。顔がデカイでしょう?」などと訳のわからない判断基準であります。なんだか気が動転しているようです。よほど違ったことがショックだったみたいです。


さて。窓の外には黄金色の畑が広がっています。どこまで行っても畑が続きます。豊かな国土。でも、平坦なように見えて、緩やかな傾斜があるため、場所によっては標高1000メートルにもなるところがあるようです。いかにも国土の巨大さを感じさせる話ではありませんか。


まだ少年のようなあどけなさの残るアテンダントのアーヴィンが個室をのぞき込みま す。パソコンを見て、「何してるの?」「妻に電子メールを書いているんだ」と説明すると、一言「THAT'S COOL!」

午後12時。本当はブランチをと思って1時間前に食堂にいってみたけれど満席。仕 方ないので、そのまま別の車両のスカイ・カフェというのに行ってみます。こちらはテーブルの食器が片づけてなかったりと、ずいぶん雰囲気が違います。尋ねてみるとここでの注文は全部別料金とのこと。食事のつかないコーチクラスのお客さんを主に相手にしているようです。というわけで、お金を使うのもばからしいのであきらめて個室に帰ってきたのです。

さて、ピークを過ぎたらしく、食堂は今度は空いていました。最初にジュースかスー プが選べます。アップルジュースを選び、それからトランスコンチネンタルサンドイッチを注文。これは3センチくらいの厚さのバゲットにハムとトマト、溶けたチーズを乗せたモノ。結構イケルんです。おまけに生の人参とセロリがついてくるんだけれど、人参がうまい!コチラの人参は生でもうまい!味に力があります。デザートのプチケーキ、どれにしようかと迷っていたら、ウェイターさんが、たくさん取っていいよ!とのお言葉。うれしいねぇ。


午後2時。ウィニペグで1時間の停車。駅周辺のビジネス街を歩いてみたけれど、妙に閑散としています。よく考えると土曜日でした。カナダで7番目に大きな街ウィニペグはプレイリーの中心地。しかもロイヤルバレエ団、ウィニペグ交響楽団と、実に文化の香り高い街のようですが、残念ながら、そういう面は全く味わえずに時間を過ごしてしまいました。それでも1911年完成の駅の建物は非常に立派です。

売店で地元の新聞 WINNIPEG FREE PRESS を買って乗り込みます。

(列車のチケット)

列車のスタッフも気づいてみると総入れ替えになりました。ありゃりゃ、ということ はアーヴィンにチップを渡せなかった!

でもね、アンおばあちゃんに尋ねてみると、彼女は一切チップを渡さないそうです。 「だって、みんなここの人たちはちゃんと給料もらっているんでしょ。それに、私の払った代金に必要なサービスの料金は入っていると思うの。」そうか・・・それでいいのか。(そうはいってもトロントで彼女、アテンダントにチップを渡してました。ホテルのことでいろいろ尋ねたからかな?)


列車は再び穀倉地帯を走ります。

窓の外には紋白蝶の大群。生まれて初めて見ました。妙というかなんというか……巨大な白いチワワが飛び回っているようなそんなふわふわした印象です。

黄金色に輝く一面の畑の上には雲一つない青空が広がっています。大平原にもときお り、農家がポツンと立っています。かならずまわりに風よけのように木が植えられています。島根県出雲地方の築地松を思い出してしまいました。


午後4時。
最後尾のドームカーへ。2階の展望席に上がると1カ所だけ座席が空いていました。 腰を下ろして眺めをしばらく見ます。隣の男性は一人でテーブルにワインのハーフボトルを置いて読書しています。そろそろプレーリー(大平原)を抜けて林と湖の合間を縫って走りはじめます。

考えてみると一昨日から昨日の午後にかけてはロッキーの山並みを、それから今日の 午後にかけてはプレイリーを、そして、これから明日の午後までは林(森)と湖の地方を駆け抜けることになります。カナディアン号ではカナダの自然の3つの魅力を堪能できるというわけです。それにしても、さっきから見ていると凄い数の湖です。そして、あちらこちらにビー バーの家らしきものが見えます。やっぱりカナダだなぁ。

最初18両だった車両も14両に減っています。おそらく途中のウィニペグかエドモ ントンあたりで切りはなしたのでしょう。驚くべき事に、今朝、雨のため少々汚れていた窓ガラスが綺麗に拭かれています。昼、ウィニペグに停車しているときに、全部拭いてくれたのでしょう。細やかなサービスに感心します。


ときおり、林の中に別荘が見えます。すると、そのすぐそばに湖があります。みんな 湖の畔に別荘を構えるようです。それでも、人口の数だけ湖のあるカナダのこと、手つかずの湖も数多くあります。ひとつぐらい僕の物にならないかなぁ。

突然列車が止まるのでどうしたのかなと思うと、なんとほったて小屋のような小さな 駅があったりします。これはコッテージの人々のための駅でしょう。そういうところでも結構人が乗り降りするから、やっぱりホリデーシーズンだね。


昨日は隣のアンおばあちゃんが新聞を買ってくれたので、今日は僕が新聞を買い、読 み終えた後に渡してあげました。気がついてみるとおばあちゃんは口をあけて座席で眠っていました。

午後5時。
夕食です。今日は夕食の予約を聞きに来たオジサンが「もう5時と9時し か選べないよ」と言います。7時はあっと言う間に予約で一杯になるようです。今日は隣のアンおばあちゃんと一緒。行ってみると本日のメニューは昨日のものとは 違っています。それでも5種類くらいの中から選ぶ仕組みになっています。凄いセレクションだよね。

今日は迷わずローストビーフ。おばあちゃんも迷わずローストビーフ。おばあちゃん が言います。「昨日も思ったけれど、ここのシェフは凄いね。本当に美味しいよ。街のレストランでもめったに味わえない料理を出してくれる」全く同感。昨日のステーキのペパーコーンソースは今まで味わった中で最高のモノでした。出てきたローストビーフもやっぱり良かった。柔らかくて、香りが豊かで。ということで、ゆっくり食事をしているうちに僕らだけになってしまいました。僕は食事があっと言う間に終わったんだけれど、アンおばあちゃんはゆっくり。しかも、途中で彼女が話に夢中になったので、もう大変。次の7時からの食事の準備を始めているウェイターさん達の視線が痛いほど突き刺さります。おばあちゃんは気づかないようで話が止まりません。結局しびれをきらしたウェイターさんが「悪いけど」と言いに来て引き上げることができました。いやいや、なかなか気を使ってしまった。

さあて、車内で退屈するだろうと、分厚い本を持ってきたのだけれど、景色を眺めたりおばあちゃん達とおしゃべりしたりで、まったく退屈しません。この調子ではあっと言う間に3泊4日の旅は終わりそうです。あと26時間で終着のトロントです。

19:30 (CENTRAL TIME)
AUG. 19, 1995



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