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PART3 カナダ横断鉄道「カナディアン号」の旅〜1日目


6月18日(日曜日)

KAY1はゆっくりと眠っていますがKAY2は6時にはすっかり目が覚めてしまいます。6時間でもしっかり眠ったせいか、目はぱっちり。短波放送のラジオジャパンにダイヤルを合わせて聞きます。航空会社にもう一度電話を入れますが、やはり留守番電話。今度は朝が早すぎるのかなぁ??

ラジオを聴いたり新聞を読んだりして過ごします。ラジオはCBCの Radio 2。なんと、懐かしい、僕がCBCで一番好きなパーソナリティ、キャサリン・ダンカンの番組、「 Symphony Hall」が始まります。5年前、モントリオールでCBCを聞いていたころ、彼女は深夜の番組のパーソナリティでした。もともとフルートを吹く音楽家。クラシック番組に、実に、感じの良い語りで登場します。彼女の語りを久しぶりにほれぼれとしながら堪能。

やがて、突然部屋のドアにノックが。表に出てみると、待望の荷物じゃないですか!取っ手にはしっかりと赤字で「RUSH」と書かれたタグが下がっていました。ややあって、電話が。アラスカ航空でした。「電話頂きましたが・・・・」「荷物つきました!」というわけで喧嘩もなにもなく、にこにこと会話しておしまい。それにしても、今頃かけてきて「なぁに?」もないと思のですが・・・ま、対応は大陸的と言いますか・・・。


荷物が来たおかげで二人ともニコニコ。すぐにコーヒーを入れて外出体制になりました。

再度、荷物を整理して、チェックアウト。年輩の紳士はクレジットカードを僕に渡しながらウィンクしてみせます。それが、アメリカ人のようにおしつけがましいものではなく、なんとなくはにかんだウィンクがカナダ人らしいと感じます(我ながら思いこみが強いなぁ)。チェックアウトして、外に出てみると、今日もいい天気です。観光客でにぎわうロブソン通りも結構なにぎわい。でも、なぜか、大手デパートの「EATON」がビルだけで、中身が空っぽになっています。つぶれたのかな??改装にしては、なにも、そういう表示も出ていません。やっぱりブリティッシュ・コロンビアは不景気なのでしょうか?


3時になり、ホテルで荷物をピックアップして、バンクバーご自慢の公共交通システム、スカイトレインの駅に向かいます。スカイトレインからは一駅でしかない、メインステーションのすぐそばに、目指すカナダ国鉄、VIA(これは旅客部門の名称で、「ヴィア」と読む)の鉄道駅があります。僕にとっては2度目ですが、何度見ても立派な建物です。それなのに、鉄道としては、一日2、3便の運行しかないというのも不思議な話です。カナディアン号に、夏場のロッキーマウンテン鉄道、そして、シアトルからのアムトラックの3種類です。ただ、駅の半分はグレイハウンドなどの長距離バスのターミナルになっていて、駅の構内にはその乗客も多く時間によっては結構にぎわいます。


スカイトレインの駅ホームから立派な駅舎が見えます。

5年前には気づかなかったのですが、駅の入り口はセキュリティ担当の男性が数名います。駅の周辺には浮浪者も多いのです。鉄道駅の周辺は北米はどこでも概して治安は良くありません。この駅の周辺も公園になっていますが、歩いている人たちにはプーさんが多いようです。べつに危険だとは思いませんが、女性客の場合、暗い時間にここを歩くのはいやでしょうね。

さて、カナディアン号出発の2時間前ですが、駅はまだ閑散としています。持ってきたバウチャーをチケットに交換すべく、左手のチケット売場に行ってみますが、客はKAY2ひとり。係官も手持ちぶさたなようです。100キロは体重があろうかという社員がもったりとした感じでチケットを発行してくれます。大きなA4くらいの紙に印刷されたチケットですがチェックインも兼ねているので、せっかくの大部分は切り離されてしまいます。ゆっくりと見てみたかったのに、残念。記念に・・・という人はこの段階で写真を撮っておかれることをオススメします。

子供の頃は30分以上、何かを待つということはとてもできなかったのに、大人になって、いつのまにか、1時間でも2時間でも平気で待っていられるようになったのは不思議です。今回も、ボーっと、駅のベンチで待っていると、いつの間にか人々で駅が混雑しはじめます。16時30分には、カナディアン号よりも後に出発するアムトラックのシアトル行きのボーディングが始まる旨アナウンスが入ります。いつの間にか、目の前の入り口には30人以上の行列ができています。ですが、なかなか入場が始まりません。不満の声がもれはじめたところで、16時50分頃、ゲートが開きます。でも、1時間30分も前なんて。

我らがカナディアン号の方は、17時30分の発車だけれども、一般客の乗車は17時10分。われらが、「シルバー&ブルークラス(カナディアン号の個室寝台サービスの名称)」はその10分前の17時が乗車時刻になっています。5年前は確か出発が20時で、乗車は19時だったような気がしますが・・・・。


駅構内です。

ボーディングの開始を待つ人々は様々です。でも、圧倒的に年輩の方が多いのは思った通りでした。中には電動車椅子で動き回っているロボットのような動きのおじいちゃんもいます。人と話したがっているようで、やたらといろんな人に話しかけています。僕のところにもやってきて、「今何時?」と尋ねてくる。目の前に大きな時計があるのに・・・。と思うと、「いや、僕の時計は狂っていて、この駅の時計も大丈夫かと心配でねぇ」との答え。駅の時計は大丈夫でしょう・・・。ま、大陸ですから、違っていてもおかしくはないですが・・・。やがて薬瓶を取り出したけれども、手元が狂って、中身を全部ぶちまけてしまいます。さすが、カナダ。すぐさま、周りの人々が集まって、拾い集めています。みんな優しいよねぇ。

日本人観光客の姿は非常に多いです。JTB、近畿日本ツーリストなど、添乗員さんがかいがいしく働いているツアーの客はざっと3、40人ほど。年輩に混じって新婚旅行と思われるカップルが3、4組。みごとに年齢層が二つに分かれています。でも、その中で、シルバー&ブルーの乗客となると、10名程度のようでした。


行列でホームに向かいます。

さて、17時、ゲートが開きます。期待に胸を膨らませて、ホームに向かいます。懐かしい、アールデコのステンレスカーの列車が3編成並んでいます。少し離れて、アムトラックの新しい車両も並んでいるのが見えます。目指す「2列車」は5番線ホーム。見た瞬間に、その長さに圧倒されます。おそろしく長大な編成。我々の車両までどこまで歩くのかなと心配すると、何のことはありませんでした。我々の車両は一番手前の、ドームカーでした。個室が4部屋あるうちのC。5年前に一人で乗ったときにあこがれていたダブルの部屋です。元気のよい若い女性アテンダントがみんなに声をかけています。「みんなドアに出てきてくれる?そうしたら、説明が早いから!」と実に合理的。名前は Tracy 。これからウィニペグまで一緒とのこと。明るいアテンダントで良かった!「オゲンキデスカ!」と片言の日本語でも挨拶してくれました。

荷物をとりあえず置くと、車両最後部のサロンに移動します。彼女がシャンパンをついでくれました。辛口のなかなか美味しい本格的なシャンパン(多分、シャンパン・・・ご存じかもしれませんが、フランスのシャンパーニュ地方のものだけが正式にそれを名乗ることができます・・・は非常に高価なのでスパークリングワインでしょうけれど)。サロンに座ったのは、いずれもこのドームカーの寝台の「住人」です。アメリカのカリフォルニアから来たM夫妻とカナダのトロントからの母・娘、そして我々で、しばしお話をします。2組とも、家族に会うための旅行だそうで、旅行先に妹がいるとか、子供がいるとか・・・。いずれもリタイアした老人達、1ヶ月程度の予定で、旅をしているようです。うらやましい限り。そのうちカナッペも出てきて、すこぉしだけ空いてきたおなかが落ち着きます。


左がM夫妻、右がトロントからの母・娘、その横がKAY1・・・、

そこでVIAのマークの入った緑色のポロシャツ姿の女性が登場。Alison といい、この列車の Activity Coordinator だそうです。前回の旅の時にはいなかったなぁと思ったら、彼女によると3年前から始まった制度だとのことでした。暇な車中の旅を楽しんでもらおうということで、ビンゴだとか、様々なレクリエーションを用意しているそうです。彼女の他に2人乗り込んでいて、うち、一人は日本語でコーディネイトできるとのこと。VIAもいろいろな試みをしているものだと感心しきりでした。彼女がニュースレターを手渡してくれます。本日の催し・・・・カナダワインのティスティングなどと書いてあり興味がそそられます。

さて、サロンの横には縦に6つの時計があります。5年前の旅行記にも書きましたが、カナダは6つの標準時があり、列車はそのうちの4つの地域を走るために、この時計が役に立ちます。その横には、お湯とコーヒーがそれぞれ入って飲み放題になっています。ポットのお湯の横にはココアや紅茶のパックがあり、自分で入れるようになっています。

カナディアン号ご自慢のドーム席にあがってみると、2,3組がすでに座っていましたが、これは、前回の時にくらべると断然少ない数です。前回は8月。ホリデーシーズンに比べるとやはり乗客はやや少な目なのでしょう。

車窓はバンクーバーの街に別れを告げます。まだまだ陽は高いですが、高層ビルを後ろに見ながら列車はゆっくりと山の方へ向かって動いています。

陽が高いので少し早いなぁと思うのですが、もう結構な時間。ディナーのコールがあったので、ディナーカーへと急ぎます。
すでに、JTBのパックの集団客が15,6人、テーブルについています。そのうち、2人座っているテーブルに我々が相席します。
札幌から新婚旅行で来ているご夫婦。ご主人は病院勤務。最初は「ま、サラリーマンです」と自己紹介しながらも、「毎日帰宅が12時で・・・」というので詳しく聞いてみたら、そういう仕事でした。医者ではないそうですが、とにかく、むちゃくちゃ忙しく、この新婚旅行も白い目で見られながらの旅行なのだそうです。奥様はその病院の喫茶店で働いていらっしゃる方だそうで、職場結婚だそうです。なかなかに、マイペースで、おもしろい人たちでした。「大自然が売り物の北海道くんだりから、わざわざ、熊や大平原や白樺を見にカナダに来るってのも、なんだかねぇと後になって思ったんだけど」とKAYSを大いに笑わせてくださいました。

料理は、KAY1がビーフのフィレ。KAY2はチキンのハーブ焼き。それに野菜添え。残念ながら、今回、味はかなり薄味で、前回のようなフレンチの濃厚なものとは違い、ずいぶんヘルシーな味付けになっていました。もしかしたら時代の流れかもしれないし、高齢者の多いための変更かもしれないのですが、濃厚ソース大好き2人組としては、正直いうとがっかりでした。いや、美味しいのは美味しいですよ!明日の料理は期待できるかな?

添乗員さんがツアー客に「申し訳ありません。部屋に備えてあるはずの日本語の沿線案内が品切れだそうです。後日お送りしますので、住所とお名前をお書きください・・・・」と説明しています。大変だなぁ、添乗員さんも。でも、各部屋に置いてある沿線案内の結構厚みのあるガイドに、日本語版があるとは・・・・。知りませんでした。

料理を終えて、部屋に戻ります。時間はまだ20時。ドームに上がってみます。すると列車はすでに人家を離れ、緑豊かな平原を走っています。そして、その向こうに雪を頂いた山が次第に近づいて来ます。それまで晴れていたのですが、進行方向に厚い雲が出てきました。ふと、後ろにいた日本人の観光客が「虹!」と叫びます。進行方向の雲に虹が架かっています。全体の四分の一くらいでしょうか、車窓に広がります。旅先で虹なんて・・・・縁起が良い・・・どころか前回のカナディアン号乗車の時にも虹を見たことを思い出します。乗るたびに見るなんて、こりゃ凄い!結構、子供のようにはしゃぎながら見ていると、他の乗客達も気づき、みんな一生懸命見て、写真を撮っています。しかもこの虹、消えるどころか次第に、大きく、全体が見え始め、さらには、2重に現れてきました。消えるまで15分くらいはかかっていたのじゃないでしょうか。やがて、列車はその厚い雲の中に入り込み、残念ながら虹は見えなくなってしまいました。そして、窓ガラスに雨がひっきりなく当たり始めます。


前回のの乗車時に続き、今回も同じ場所で虹と遭遇!

後ろにいるツアーの日本人のおばあちゃん二人が話しています。「アメリカもそうだったけど、こんなに広大ですごい国だもん。日本が戦えるわけないじゃないの。馬鹿なことしたねぇ」戦前、日本人が海外旅行好きだったら、あの大戦も起こらなかったかもしれないですね。「海外旅行が増えると戦争が減る」てな公式ができるかもしれません。ちょっと楽観的過ぎる見方かもしれませんが。

まだまだ明るいのですが、21時を回り、部屋に戻ります。Tracy に頼んでベッドをおろしてもらいます。彼女に日本語での挨拶の仕方を教えてくれとせがまれ、いくつか日本語のフレーズを教えてあげました。「Good night はどういうの?」メモに O-YA-SU-MI-NA-SA-I と書いてあげると、「オヤスミナセイイ?」あ、そうか。最後の SA-I を SIGH に書き換えてあげます。今度は完璧。KAY1が英語をしゃべれないことがわかると、「ねぇ、私なんて、身分が政府職員だから、フランス語を政府から1年半も習わされたんだけど、どうもダメ。そう彼女に教えてあげて!」と優しいフォローをしてくれます。それでも、同僚のフランス系職員が来たら、流ちょうにフランス語で打ち合わせをしていたけれど・・・・。さすがカナダはバイリンガル国家。政府がお金を出して1年半もフランス語を習わせてくれるんですねぇ。

大きな背もたれのイスが部屋には2つあるのだけれど、なんと折り畳みができるので、折り畳んだ上でその上にベッドが被さる仕組みになっています。非常に重いベッドで、壁からおろすのは鍵も必要ということで、自分では残念ながら、好きなときにベッドをおろして、またあげるというわけにはいかないようです。以前利用した一人用個室ではそれが可能だったんですが。

部屋の中をざっと紹介しておきます。広さは畳でいうと3畳くらい。前に乗った一人用の3倍はありそうです。洗面台とトイレがあり、荷物を置くスペースも洗面台の上にあります。おそらくスーツケース一個くらいは楽におけるのではないでしょうか。ただし、不必要な荷物は荷物車に預けることができるので、我々も、スーツケースは中身を取り出し、バンクーバーの駅で事前に預けています(駅のチケットカウンターの10メートルほど奥に荷物のチェックインがありました)。スペース確保のため、車内持ち込みの荷物は最低限にしたいところです。

ところで、トイレの便座が異様に小さいのです。部屋のスペースの問題かと思いましたが、部屋の外のトイレも小さいのです。この後、カナダの他の場所でも小さな便座によくお目にかかりました。ちょっと不思議な気持です。カナダ人はアメリカ人と違って太った人が少ないけれど、それでも、この小ささはちょっと。僕ら日本人の常識からしても小さいのです。なぜだろう?他の乗客から不満は出ないのでしょうか。今回の旅最大の疑問かもしれません。
 
部屋には、そのほかに、車両ガイド、時刻表、そして、シャワーキットに、沿線ガイドの本があります。この本はさきほど食堂車での話にも出てきたけれど、100ページ近くあるもので、沿線の見所をカラフルな写真とともに紹介しています。線路沿いにはマイルポストとよばれる主要駅からのマイル数が表示された木製の杭が立てられており、車窓からそれがよく見えます。この地図には、そのマイル数とともに、見所が書かれていますので、自分が今走っている場所について、車窓からマイルポストを見つけ、そしてこの地図を見れば即座にわかる仕組みになっています。便利この上ない本です。また、5年前にはあった、キャンディのサービスはなくなっていました。

  
左が昼間の部屋、夜は中のように2段ベッドになります。そして右は洗面台。とても清潔で機能的です。

こんな風にベッドをしまってくつろげます。ちなみに窓際にあるのが短波ラジオ。あ、KAY1は顔出し不可なので「ヒミツ」!(笑)

Tracy に部屋の鍵のことを聞いてみました。部屋は内側からは鍵ができるけれど、外側には鍵穴があれど、鍵は部屋においていません。そのことを尋ねると「どうしてもというのなら、私が持っている鍵を利用できるけれど、でも安全よ」との答え。貴重品は常に身につけることにして、ここは彼女に従うことにします。

さて、部屋に置いてあったシャワーキットを取り出します。バスタオルにふつうの大きさのタオル。そして、シャンプー、石鹸、シャワージェルと、必要なものはそろっています(歯磨き類はありません、あしからず)。それを持って行ってシャワーを浴びたら、さっぱりとして、寝台に体を横たえます。寝台もゆとりのある広さで適度な堅さもあり、寝心地はとてもよいです。いつしか、快い震度に体を預けて眠りに落ちてしまいます。


一人用個室は体の向きが進行方向に沿っていますが、二人用個室は横。したがって、出発時や停車時、列車の振動が結構強く感じられます。





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