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PART 6 カナダ横断鉄道「カナディアン号」の旅〜4日目


6月21日(水曜日) 天気 晴れ

ラジオをつけると今日は夏至。一年で一番日が長い日です。あ、そうか。だから、こんなに朝も早いんだ!遅まきながら気付きました。その後、NHKの短波放送にダイヤルを会わせます。「今日は夏至」・・・同じ事を言っています。夏至って北半球では各国一緒だったんだっけ?と理系に弱いKAY1は考え込んでしまいます。恥ずかしい。

ともかく今朝は5時半に起床。外はすでに明るくなっています。実は夢で仕事仲間が出てきました。二重人格で悪名高い人物なのですが、なぜか僕が彼にいわれもない理由でゆすられるというとんでもない夢で目が覚めたのです。夢見が悪いといやなものです。さっぱりといやなことは洗い流そうとKAY1と一緒にシャワーに行ったのですが、全身に石鹸を塗ったところで、いきなりお湯が止まってしまいました。「そりゃないぜぇ!」と、しばらく待つのですが、水の出る気配はありません。そういえば、いつの間にか列車は止まっています。泡立ちの良くない石鹸で助かりました(笑)。そのまま体が乾くのを待って、下着をつけて外に出てみます。ちょうど若い女性車掌がやってきまhした。「お湯が出ないんだけど?」「今駅にとまっているからそのせいかも。もうちょっと待って?」KAY1の方はどうだろうと、別の車両のシャワーに行くと、そこでも、彼女が髪を濡らして立っています。「水が止まったのよ!」結局、駅での給水の関係で水が止まったようです。「あと5分待って!」との車掌の説明だけど、びっくりしましたねぇ・・・。5分後、無事に水が出て一件落着。シャワーの外には別のお客さんが待っていました。どうも、シャワーは朝あびる人が多いようです。それに、パンツ一丁でシャワーに行く人も。カジュアルなんですよねぇ、すべてが。


シャワールームは狭いですが、とっても清潔。お湯がふんだんに使えるのも水資源が豊かなカナダならでは!

6時半。朝食。実はカナディアン号は朝8時に朝食のコールがありますが、それより前6時30分に朝食がスタートします。眠っている乗客を起こさないようにという配慮でコールがないわけです。さすがに朝早いので、テーブルについたのは、10人ほど。僕らの前にはアジア系の年輩のご夫婦。奥様がつけている名札には Martha と書かれています。てっきり中国系かと思っていたら、なんと言葉の途中に日本語が混じるのを発見!奥様は祖父母が広島からの移民なのだそうです。そしてご主人は中国系。もちろん日本語は話せないのだけれど、少しの単語はわかるとのことでした。カリフォルニア出身。サンディエゴの近くにお住まい。中国系と日本系のご夫婦、本当はいろいろとプライベートなことも尋ねてみたかったのだけれど、初対面でぶしつけなことも聞けないので、やめておきました。とても仲むつまじそうでした。

からっと晴れ上がった空にひかれたのか、今日のドームカーには8時には続々と集まってきます。みんなの話題はやぱりムース。昨日、やっとKAY1もビーバーを見たおかげで、我々は動物はもういいやという感じにもなっていますが・・・。

現在列車は1時間と10分の遅れです。ほとんどが単線区間のため、列車の上り下りの交換があり、いったんダイヤに遅れが生じると、取り戻すのは難しいようです。おそらく、終点まで、この遅れは取り戻せないでしょう。外の景色は相変わらず林が続いているのですが、昨日ほど湖は頻繁にはあらわれません。そして、もう一つ特徴的なのはずいぶん多くの木が枯れているのです。このあたりになると工業地帯が近くになるので、酸性雨のせいでしょうか。一部明らかに山火事と思われる立ち枯れもありましたが、それだけではないようです。荒涼とした景色が続くのは残念でした。

個室に戻り、ラジオに耳を傾けます。残念ながら、FMやAMは1局も入りません。こういう時に役に立つのが短波放送。案の定、CBCがアメリカ向けに出している短波放送が良好に入ってきました。朝のワイド番組を聞き、ニュースを仕込みます。続いて、カナダ中継のNHK(ラジオ・ジャパン)を聞いてみました。こちらも良好。葛西アナのニュースで、森首相の新たな失言や岡山の高校生によるバットでの母親撲殺など、どうも、殺伐としたニュースが続きます。しかし森さんも困ったものですねぇ、根は気のいいおっちゃんかもしれませんが・・・・。森首相とかけてカナダのオンタリオ州を行く鉄道の車窓ととく。その心は・・・「しつげん(湿原)の連続」なんちゃって!

うとうととし始めると、女性の声が聞こえます。KAY1が「ラストって言っていたような気がするけれど」と不安げ。しかし、時計は13時。最終が昨日と同じ14時半だろうから、まだ、もう1回コールがあるでしょう。それに、おなかもすいていないし・・・・。ということで、今回はパス。部屋でそのまま読書をしながら過ごしました。ところが・・・14時半をすぎてもコールはなし。どうやら、KAY1の言うとおり、先ほどのがラストだったようです。でも、おなかは・・・、これがそれほど空いていないんです。とりあえず、サロンで果物を仕込み部屋に戻って食べることにしました。

C
apriol では皆車外に出て外の空気を深呼吸!

Caprial 到着です。短い停車ながら、太陽の光を浴びにみんなぞろぞろと車両の外に出ていきます。外が恋しくて・・・。ホームも短い駅なので、線路の上を歩いて、しばし、伸びをして、深呼吸で空気を吸い込みます。風が涼しくて気持いい!乾いた土の匂いと緑の匂いが混じっています。目に太陽がまぶしく感じます。もう、あと数時間で、トロントに到着するなんて・・・と思うと、残念な気がしてきます。

再び、列車に乗り込みます。ドームに移動。ドームからの眺めは、再び両側に湖などを見て、天気もいいせいで、なかなか楽しめます。このあたりは、原因不明(だそうです)の自然現象で、岩がむき出しになった景色が続いています。このごつごつした岩肌が実は北米の大部分を覆っているそうで、地盤が日本とはまったく違い強固なのだなぁと改めて思い知ることになります。

また、そうした岩肌をぬって走る川の水の泡立ちは、なぜか、榮太郎飴のように、暗い茶色を帯びています。水のせいなのか、それとも、岩肌のせいなのか・・・・。


このあたりは岩肌の目立つ景色が続きます。

目の前にはお歌の好きな子供がいて、ひっきりなしに歌っている。いっしょに乗っているおじいちゃんとおばあちゃんが、「今度はあの歌を歌って!」などと、孫に次から次へとリクエスト。おじいちゃんはおじいちゃんで、右手には鉄道無線を聞いていると思われる受信機。そして、左手には詳細な鉄道地図とインターネットでダウンロードしたと思われる膨大な資料を抱えています。正真正銘の鉄ちゃんのようです。(なにせ食堂車まで無線機を持って来てましたから・・・。)

17時半に夕食のコール。我々は、すぐに食堂車に移動。今度は食べないわけにはいかないのです!なにせ、トロントは到着が2時間遅れの午後10時頃になりそう。それから、食事にありつける保証はありません!

到着前の夕食なので、簡単なものかと思っていたのですが、さにあらず。スープにサラダが出てそれからメインという、立派なものでした。本日のメインのチョイスは、舌平目、子牛、そして、チキンというもの。最後のデザートのレモンムースに全身レモン臭をただよわせながら、部屋に戻ります。


もう、食べてばっかり!何という生活でしょうか!!

ちょっと早いけれど、荷物を整理して、再びドームに向かいます。2度目のコールで夕食を取っている人たちもいるせいか、ドームは空いています。旅行中一人で行動していた見目麗しき熟年女性と、Mご夫妻がいる。
 
「KAY2さん、ドームカーのおかげで列車の先頭の向こうにある信号が緑色なのをやっと見たわよ。本当に長い列車ね。いつも赤に変わってからしかみてないものねぇ」と Mabel おばあちゃんが声をかけてくれます。別の熟年女性が「まるでおばあちゃんと孫の会話みたいね!」と声をかけてきます。年齢的には息子なんですよね、確かに。それにやっぱり日本人は若く見えるみたいだし・・・。

やがて、20時をすぎるとさすがに車窓は夕暮れが近づいてきます。別荘の向こうに大きな湖も見えます。太陽も地平線に近づいてもなかなか沈みません。緯度が高いと夕暮れもゆっくりなのですね。今回の旅では、前回のようにヒューロン湖のほとりを走ることがありません。前回は事故による路線変更のために生じた、言ってみればオマケのようなものでした。少し残念。


列車はやがて、トロントに向かって住宅地を疾走します。空も暗くなり始め、遠くに高い塔のようなものが見え始めました。「CNタワーかなぁ」などと話すのですが、近づいてみるとなんのことはない、送電線の塔でした。(笑)

M夫妻が僕らに別れを告げて部屋に戻ります。21時半をすぎて、真っ暗に。気づくとドームには我々しかいません。もうすぐトロントだというのに、列車は緑の中をひたすら走っています。大都会のはずですが、郊外には実に豊かな緑があるのです。

右手に摩天楼が姿を現しました。列車はスピードを落とし、大きくカーブして、摩天楼、そしてCNタワーが進行方向に変化していきます。我々も部屋に戻らなければ・・・。


トロントの摩天楼が見えてきました。

22時00分。時計を見ているとぴったりに列車はトロントに到着しました。この「ぴったり00分」というのが、2時間遅れという遅れを出しながらも、CNのプライドと意地を感じさせるではありませんか!ナトリウムランプがともる駅の構内はどことなく旅の終わりにふさわしい寂しさを醸し出しています。

ホームから階段を降り、荷物の受取所に向かいます。重厚な石造りの駅は、だだっ広く、人々の喧噪がこだましています。空港の荷物の受け取りとまったく同じ形のコンベアがあるのですが、その長さは実に短いのです。30メートルくらいかな?したがって、そこに人々が殺到すると・・・・、荷物がとれないのです!いったんあきらめて、人々が荷物をとって、受取所を出始めたところで、我々も目指す荷物を受け取ることにします。うん、今回は無事に荷物が到着。

 
左が荷物の受け渡し所です。右は翌日撮った駅外観。歴史を感じさせる重厚な建物です。

さて、駅を出て、歩き始めます。トロントは治安がよく、夜、こうした人通りの多いところを歩くのは安全。しかもホテルは駅から徒歩で3分。これは便利です。雨が降っていても、ビルの地下を通っていけばホテルまで濡れずに行けます。そのホテルは5年前に滞在した Crown Plaza Toronto Center。ビジネス客の多い、グレードの高いホテル。インターネットで予約済みです。

懐かしい赤地に白の Crown Plaza の文字が見えてきました。フロントに向かうと、なんと車内で出逢ったお歌の少年と「鉄」おじいちゃん、おばあちゃんが!手を振りあいます。

さて、受付でチェックイン。ダイレクトメールで案内が来ていた無料アップグレードの話を持ち出すと、なぜか、「それが、ちょっと、問題ありでして。今、上司から説明があります」との事。上司を待つ間、四方山話。その受付の女性はフィリピンの出身だそうで、僕たちが鉄道でバンクーバーからやってきたと聞いてびっくりしていました。「もしかして、飛行機が苦手とか?」などと聞いてきます。「私もそうなんです。だからフィリピンまでの帰国のフライトがいやでいやで・・・。」

さて、その上司がやってくると、まず自己紹介。「キャロリンです。よろしく。実は本日部屋が全室ふさがっておりまして・・・・」じょ、冗談でしょ・・・。「そこで申し訳ありませんが、別のホテルを紹介しますのでそこに移っていただきたいのです。明日から2泊は当ホテルで大丈夫です。もちろん、本日の宿泊代、ホテルまでの交通費、お支払いします」ありゃりゃ。「どちらのホテルになるの?」「マリオットのコートヤード。できたばかりの新しいホテルです」KAY1に事情を話します。仕方ないですね。条件的には悪くなさそうです。「じゃぁ、お願いします」。彼女が「荷物をお持ちしましょうか」と僕のスーツケースを指さします。「空だからいいですよ」「何で空のスーツケースなんか???」「帰りはきっとおみやげでいっぱいだから」すると彼女も笑って「私もドイツに帰るときは自分の荷物なんてないですよ。スーツケース2個ともおみやげだわ!」などと話しつつタクシーに我々を案内します。「明日は私も待機していますから声をかけてくださいね」と運転手にチップをはずんで、先払いしてくれます。まぁ、完璧な対応でした。

タクシーはアフリカからやってきたという青年が運転してくれます。降りる直前になって話しかけてきました。なかなかにハンブルな青年。インド映画を見て日本語の「さよなら」という言葉を覚えたというちょっと不思議な話をしていましたが・・・。彼らにとってはインドも日本も同じアジア。一緒くたなのかもしれません。

ホテルは確かに新しいホテルで、 Marriott Courtyard という名前でした。マリオット系列のビジネスマン向け廉価ホテルのようです。フロントで手紙を渡すと一発OK。すぐにチェックインとなりました。部屋は広めで、とても清潔。ただ、案内を読んでびっくり。ホテル内のレストラン、バーなどは22時で閉まってしまうというではありませんか。時計はもうすでに22時半。そして、我々のおなかは・・・・空いたぁ!


オーバーブッキングのためかわりにあてがわれた別のホテルの部屋は清潔で広々としていましたが。

そこで、ホテルの外を探検!ヤングという目抜き通りなので、結構人通りはありそうということで、外に出てみたのはいいのですが、どうも雰囲気がよくないのです。通りの店もポルノショップとかその手のモノ。ホウホウノテイで引き上げました。しかたなく部屋のミニバーでも・・・あれ、ない!

ということで、このホテル、どうも立地もよくないし、サービスも何かちょっと欠けている感じで我々日本人旅行者にはつらいかもしれません。

ところで、バンクーバーのホテルでも思ったのですが、我が国の誇る公共放送、NHKのテレビ放送はどちらのホテルでも、入っていないのです(この後、Crown Plaza でも入っていないことが判明)(注:2000年の状況です。現在は状況が好転していることを祈ります!)。しかたなく、日本のニュースは短波ラジオの登場となります。短波ファンの僕にはそれでいいけれど、一般の日本人はそれはつらいですよねぇ。NHKさんももっと積極的に営業活動しないとねぇ。

なにもない!とわかれば、もう、眠るだけです。シャワーをあびて、ベッドに横になりました。





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