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040 Tivoli Audio Model One(チボリ・オーディオのモデル・ワン)
で音作りの発想を考える

注:2015年現在、BluetoothやワイドFMに対応した後継機 Model One BT が発売中です。

2012年 4月24日
(追記:2012年 4月27日)
(追記:2015年12月 5日)

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我が家のキッチンカウンターが定位置。
このシンプルなデザインのおかげで女性にもウケが良いです。
2016追記:
人気ドラマ「逃げるは恥だが…」の平匡さんの部屋にもTivoli Audioが!



KAYS掲示版に情報をお寄せ下さるまう吉さん、いつもありがとうございます。そのまう吉さんが Tivoli Audio の Model One(モデル・ワン) というラジオを手に入れられたという書き込みを見て、「あ!」と触発されました。そう、今回のモノ・インプレッション、そのラジオについてです。

まず昔話から。2005年の秋、このラジオの事を知り、実際に見せてくれるお店に行きました。原宿にある、AssistOn(アシストオン)というおしゃれで面白い様々なグッズを扱うお店です。現在、そのお店のWEBでこの機種の詳しい説明が掲載されています。まさに惚れ込んだという雰囲気がびしばし伝わってくる解説です。(http://www.assiston.co.jp/?item=1126

そして、その店頭で見てすっかり心を奪われたKAY2。実はちょうど、実家の父親にプレゼントをと思っていたのです。父は寝ても覚めてもラジオを聴いているという大のラジオ好き。ただし、我が家は電波の超難聴地域。NHKのラジオ第一放送さえ満足に聞けません。そこでかなり前になりますが、一計を案じ、当時60MHz帯で放送局から送信所へ伝送しているラジオ第1放送の電波を捕まえ、それを聞くようにしてもらっていました。メリットもありました。通常のラジオと違いFMですから、ハイファイ音声。

ところが、その中継波、ある時突然停波。NHKに電話で問い合わせてみたら(技術担当の方がとても丁寧に対応してくださいました。ありがとうございます!)周波数が変わってしまい、しかもその受信は非常に難しくなってしまったのです。

と、そういう時期だったので、いいラジオを買ってプレゼントしたい…それも、少しでも音の良いラジオを…というのがありました。

で、KAY1を説得(とても高価なので財務大臣の許可を得ねばなりませんでした)。一台注文し、東京から実家に持って帰ったのです。

父親、大事に使ってくれていたようです。ところが、その数年後、残念なことに父は亡くなり、このラジオはその形見となってしまいました。そして東京に戻って、しばらくベッドサイドに置かれていましたが、その後昇格し、リビングのキッチンカウンターに。


実はKAY1がこのデザインを気に入ったための昇格でした。今では二人ともお気に入りのラジオとなっています。そう、デザイン、とてもシンプルで良いのです。上記のページに書かれていますが、イタリア、ミラノのブルガリホテルでは全室で採用されているとか…。

デザインもそうですが、何と言っても特筆すべきは音質です。

もともとハイファイ・スピーカーなどを設計していたヘンリー・クロスという方が引退後、ご自身でボストン交響楽団の中継を楽しみたいという思いで仕事に復帰して作られたそうですから、本当に音質重視。中低音の響きが特に重要視された作りとなっています。この響きがまた人の声に良く合うんです。特にバリトン声域の声に。やや「ブーミー」に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これが、ある条件下では最高に輝きます。

その条件とは…。

海外の、特に欧米のFMを聞くのです。

え?このラジオで?

勘の良い方はピンと来たでしょう。そう、KAY2の定番、インターネットで海外の放送を受信し、FMトランスミッターで飛ばし、このラジオで聞くんです。すると…、KAYSが一番よく聞くのはイギリスの Classic FM と BBC Radio 2。このプレゼンター達の声が実につややかに響くのです。これは、一度体験するとやめられません。本気で「ヤバイ」です。BBC の Radio 2 はかかる曲も60~80年代のヒット曲中心ですから、KAYSの世代にはもう、ありがたすぎて、思わずヨーロッパ方向に跪いて頭を床にこすりつけて感謝してしまいそうです。(
2015年現在、後継機のModel One BTはBluetooth機能がありますので、FMで飛ばす必要はありません!

端的に言いましょう。ともかく…音に
「色気」があるんですよ。

なぜ?おそらく、大前提として、人の声を魅力的に聞かせようという音作りをまず、放送局がしていること。さらに、それを最高に響かせようという音作りをこの Model One がしているという相乗効果だと思います。で、実際に同じ事を、例えばデンマーク製のラジオ、Tangent Quattro 2でも感じましたし、イギリス製の Roberts などのラジオでも感じました。いずれも人の声が魅力的に響くんです。

ひるがえって、我が日本の放送局&ラジオメーカーは、おそらく根本の思想が違うんじゃないかなとKAY2は思います。

こんな例があります。ヘッドホンです。

日本の放送局や音楽スタジオでは定番と言われるヘッドホンがあります。SONYのMDR-CD900STという機種で、TVの撮影現場などをご覧になると大抵、音声さんがつけているのがこのヘッドホンです。なにせ装着感が良いというのもありますが、基本的に素直な音作りで、まさにハイファイ(高忠実度)な音作りです。逆に言うとおもしろみの全く無いヘッドホンですから、これで音楽を楽しみたいとはあまり思わせません。

一方、ヨーロッパの放送局向けに、SONYはMDR-7506という別機種を出しています。実は見た目がよく似ているのですが、音作りはかなり違うと言われています。つまり、音に艶があると。もちろんモニター用ですから、忠実さを重視しているのですが、それにしてもこの違いです。

ね、つまり発想が違う。

・日本は高忠実度が求められるので、いかに、「リアル」な音を聴かせるかが重要。

・欧米では忠実さよりも、いかに「魅力的」な音を聴かせるかが重要。


その差こそが、このラジオにも表れているのじゃないかなと思います。


アンテナ入力もしっかりとありますし、AUX入力も。そう iPod などをつなげて楽しむのも良いです。
白いアンテナコードは自分でFMトランスミッターの周波数の波長にあわせて
コードを買ってきて切りました。コレがドンピシャ。「波長」、大事ですねぇ。
別の部屋に置いたトランスミッターの弱い電波でも綺麗に聞こえます。
CATVで再送信しているFMもコネクターは一般的なTV用のF型コネクターですからぴったり。


というわけで Tivoli Audio の Model One、欧米的な魅力ある「人の声」を聞きたいという方にはぜひオススメです。

一方で、淡泊な音が好きな方には薦められないかもしれません。それに、チューニングはダイヤルですし、デジタルの周波数表示もありません。スピーカーも一つだけ。モノラル(ヘッドフォン端子からの出力はステレオ)です。そういう意味である種の「割り切り」も必要です。また、FMの感度の良さは評判ですが、AMに関してはそれほどでもありません。場合によっては外部アンテナをつけてやる必要があるかもしれません。

とはいえ、発売されて10年以上も売れ続けているロングセラー。その評価はゆるぎないものと言っていいのではないでしょうか。その音質のすばらしさに加えシンプルなデザインが人々の心をつかみ続けるのでしょう。ちなみに上記AssitOnのページの解説、最後の方に、そして Tivoli Audio のページにもクロス氏が1960年に作ったKLH社の真空管式ラジオが掲載されていますが、こちらのデザイン、この Model One にかなり似ていました。ということは半世紀もの長きにわたって、このデザインが受け入れられていることになります。

まう吉さんも指摘されていましたが、一つご注意を。オークションなどで安価に出ている場合がありますが、その場合、FMの仕様を見てください。海外から直接輸入されたもの(並行輸入品)ではFMが欧米仕様となっており、日本のFM局の大部分が受信できません。日本の代理店を通して販売されたものを狙ってみてください。そちらはちゃんと日本向けのFMバンドとなっています。





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