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PART 5 カナダ横断鉄道「カナディアン号」の旅〜3日目


6月20日(火曜日) 天気 雨

朝、4時半には目を覚ましてしまいます。外はすでに明るくなっています。ということは夜の時間はわずか4、5時間ということになります。考えてみれば、ここはバンクーバーよりも相当北。サハリンよりも北なのです。ほとんど白夜ですねぇ・・・これは。


ひたすら大平原・・・のプレーリー。

ラジオをつけてみますが入ってくるFMは、1、2局。しかも、リジャイナの局。ここはそこから、100kmも南なんですが、この路線沿いの放送は入ってきていません・・・というよりないのかな?かろうじてCBCで弦楽四重奏を流していますが、これも、雑音が次第に大きくなってきます。

ドームに行ってみると、まだ、人っ子一人いません。Tracy もまだ来ていないようです。ポットのコーヒーも昨日と同じく、まだ、新しいものには変わっていません。そりゃそうですよねぇ。まだ5時にもなっていないのですから。

ドームの窓をひっきりなしに雨が打ちつけています。せっかくのプレーリーですが、くすんだ色に見えています。やがて、6時をまわり、コーヒーの香りが漂いはじめました。Tracy がコーヒーを入れています。「どうしたの、昨日の午後、すっかり姿が見えなかったじゃない!」「寝てたんだよ」「ベッド出してあげたのに」「いいのいいの、イスで十分」てな話になりましたが、さすが、アテンダントは乗客がなにをしているか常に把握しようとしてるんですね。

ドームカーに置いてあるコーヒーとバナナマフィンで簡単な朝食を済ませます。そして、部屋に戻ってみると、なんと、食事の間、さっそく彼女は部屋を片づけて置いてくれたのでした。しかも、ベッドは上段を片づけて、下段を出してくれています。ありがたい配慮です。ベッドの上に簡単なメッセージと、3日分のチップ10ドルを置いていて良かった!日本語のガイドブックを妻のために探してくれたことへの感謝も込めて・・・。

ドームに戻り、景色を楽しむことにします。雨とはいえ、延々と続くク・アペレ渓谷はすばらしい眺めです。これは車窓の右に広がるので、残念ながら右側の個室の人たちは見ることができません。ドームカーならではの贅沢。ドームカーは昨日と違って、8時を過ぎても、乗客は増えません。雨のせいでしょうか。ロッキーと比べて眺めが単調なためでしょうか。時々牛が見えますが、なぜか、顔が白い牛が多いようです。美白牛と勝手に名付けたりします・・・・。

やがて Tracy がやってきます。チップの礼を言い、ベッドについて、「下のベッドだけだと、一人でもレバーを動かせば片づけられるし、呼んでくれてもいいよ」と説明してくれます。そうして、ドームにいる若い父親と娘を「実は会社の同僚なのよ。彼は機関士で、こちらは娘さん。ここに居ないけれど母親も一緒で彼女は私の上司、Service Manager なの」との説明。若いのに鉄道旅行なんて珍しいと自分を棚に上げてKAY1と話していたんだけれど、VIA の人だったんだ、と納得です。ちっちゃな女の子は3つくらいでしょうか。Tracy の後をついてちょこまかちょこまか歩いています。「私のお手伝いをしてくれているつもりね」と彼女が笑います。

その間、何度か朝食のコールに Gordon が姿を現します。9時前に「朝食の最後のコールだよ!」と叫びながらドームに来ました。ガラス窓に打ち付ける雨を見て「ひどいながめだね。食堂車にくれば天気がいいよ!」と皆の笑いを誘います。

再び Tracy がやってきました。「さっき遅れを尋ねたでしょ。1時間遅れになっているわ」それだけ言うと帰っていきます。本当に親切な Tracy に感謝。


とっても親切なスタッフの Tracy。ありがとう!

午前10前、それまで静かだったラジオのダイヤルを回してみると、FMの92.7でCBCのクラシック番組が強力に入ってきます。ポーテッジ・ラ・プレーリの局のようです。ニュースはCBCウィニペグと名乗っています。いよいよ、あと1,2時間でウィニペグにつくはずです。ラジオからは大好きなロシアの作曲家、ラフマニノフノの交響曲2番の最終楽章がきれいなステレオで聞こえてきます。広大なプレーリーが一瞬ロシアの大平原のように思えてきます。突然、線路の近くで鳥を追いかけて走る狐が見えました!動物には驚かなくなっても、やはり、突然の出会いにはびっくりしてしまいます。

やがて遠くに青く、低い丘のようなものが見えてきます。よく目を凝らしてみると、木立なのですが、その手前に水面が見えます。どうも、地図で見るとマニトバ湖のようです。それにしても、木立の青い色からは、相当距離がありそうです。それがすぐそばに見えるというのも凄い話。起伏のない(ように見える・・・というのも、全体で見れば、相当な高低差があるのですが、広大すぎるので、その高低差がわからないのです)プレーリならではでしょう。言ってみれば、霞ヶ浦とその対岸が、東京の大手町から見渡せるって感じでしょうか。線路はひたすらまっすぐ。行き違いで止まっても、対向列車は、はるかかなたのまっすぐ先に、まず、ライトが見え、それから、近づくまでの時間が実に長いのです。こんな大地を毎日見ていれば、確実に自分の生活リズムはゆっくりしてくるに違いありません。


雨のウィニペグ市街

ウィニペグに到着。相変わらず雨が降っています。車掌の一人が「昼食のコールはウィニペグ停車中にありますからご注意ください!」と叫んでいます。長い列車はホームに止まりきれず、後ろの車両の戸口は閉じられているようです。Tracy が大柄な男性と話しています。「こちらは私の後に勤務する Robin よ。Robin、こちらは KAY夫妻。よろしくね」

食堂車の横の出口でやっと外に出るものの、ホームの屋根はまだ先で、雨に濡れながら走ることになりました。エスカレーターを降りると、そこにいる駅員が、「11時40分の乗車時刻まで、いったんホームを閉鎖するので、注意してください」とみんなに呼びかけています。停車中に物資の入れ替えや清掃などをするので、その際、人の出入りを制限しているのだそうです。

ホームの下になる待合室は相当な広さです。木目のベンチが多数並び、コーヒーのサービスなど、シルバー&ブルー専用のサービスもあります。しかし、なんといっても圧巻なのは、そこを出た駅のロビーでしょう。見あげんばかりの高いドームの下、広いホールは歴史を感じさせます。この駅はかのニューヨークのセントラルステーションと同じ設計者が作ったものだそうです。本当なら駅の外に出てみたいのですが、この強い雨。あきらめて、新聞を買い、ロビーで時間をつぶすことにします。とはいえ、列車が遅れて到着した関係で、20分もすれば乗車なのですが・・・。歩き回っていると、鉄道博物館なるセクションがあることに気づきました。入ってみたいのですが、それほど時間があるわけでもないので後ろ髪をひかれる思いです。やがて、乗車のコールがあり、再び列車に乗り込みます。ホームでは Tracy が仲間と談笑しています。手を振って別れを告げました。


ウィニペグ駅のドームは圧巻です!

雨の中のウィニペグ、歴史ある建物を方々に見ながら、列車は河をわたり、街からみるみる離れていきます。部屋に戻り、新聞、Winnipeg Sun を広げてみます。昨日書いた税金の話にまつわる記事が出ていました。アルバータ州の税金の安さも、税制改革で隣のサスカチュワン州に負けそうとの記事が大きな見出しとともに書かれています。イギリスでは不法入国をしようとした中国人がトラックのコンテナで見つかり60人のうち、58人がすでに窒息死していたとか。何とも悲惨な話で溜息が出ます。我々にとってはこうして休暇をとって世の中の流れがとまっているようでも、世の中は相変わらず動いています。イギリスの事件はCBCラジオでも大きく報道していました。

朝が早いとやっぱり眠くなるもんですねぇ。気がつくとベッドで二人とも眠りこけていました。時間は14時。どうやら昼食のコールも眠っていて気がつかなかったのでしょう。あわてて二人で食堂車に行くと、どうも、勝手が違います。みなデザートを食べているのです。今度のコールは14時ではなく、14時半とのこと。安心しながらもすごすごと個室に帰ります。実は朝早くに簡単な食事だったので、さすがにおなかがすいてきたのです。いや、なにも運動もしていないのに、こんなにおなかがすくとは恥ずかしいのですが・・・・。

14時半、昼食にありつくと、さすがに今日はパクついてしまいます。KAY2はチキンの胸肉入りシーザーズサラダ。そしてKAY1はアルバーター牛のハンバーガー。そして、今日のテーブルの向かいは中国人の女性。例のツアーの一人です。ツアーの他の人たちは夫婦単位で参加しているのですが彼女は一人。話してみるとご主人と死に別れてから一人で、ときおり旅行に出ているのだそうです。お仕事はペンシルバニア州立大学で中国語を教えていらっしゃったそうです。彼女の住んでいるところはフィラデルフィアにもニューヨークにも、その他多くの街に車でいずれも5時間以内にはいけるのでとても便利!とのことでした。うーーん、車で5時間だから便利って・・・ちょっと便利さの単位が我々と違っていて驚いてしまいます。とても物静かな女性で、なんとなく日本人的でした。

 
昼食です。アルバータ牛のハンバーガーとシーザーズサラダ

我々はデザートのアイスクリームまでしっかり食べています。食堂車のスタッフもすっかりメンバーが入れ替わったようです。いままで髭の Gordon がやっていた飲み物係は今度は南アジア系の男性に変わっています。「食事は19時30分からだよ」との話。どうやら、もう他の時間はすっかりいっぱいになったようです。いまから4時間で夕食!フーとため息が出てしまいます。KAY1曰く。「空腹との戦いというのはあるけれど、満腹との戦いね、この旅は。」

ドームカーからの眺めは大きく変化しています。プレーリーはすでに消え去り、一面の緑とそして、その間に次々に湖が現れます。いずれも小さなものですが、その周辺には小さな小さな建物が点在しています。別荘です。カナダの別荘は実に小さな、わずか2、3室くらいの実につつましやかなものが多いのです。それも、電気も引かず、ランプと薪で1ヶ月、自然の中のバカンスを楽しむという人は多いんです。しかも、別荘の建物は自分で建てるケースが多い・・・。僕もそうした別荘生活にカナダの友人が連れていってくれたことがあります。テレビもラジオも置かず、ひたすら、自然を楽しもうとする彼らに自然に帰ろうとする強い意志を感じたものです。

子供の頃から異様に湖(大きさでいうと池なのだけれど)が好きだったKAY2はここからの横断鉄道の眺めが一番好きです。物心ついたときから、将来は絶対、湖の畔に家を買って住むんだと思っていたので、このカナダの湖を見る旅に、途中下車したくて仕方がないのです。いつか夢は叶うことがあるのかなぁ・・・・。(調布に湖は・・・ないよねぇ・・・)

そんな湖の一つにビーバーを発見してしまいました!すいすいと泳いでいます。すぐそばに木の枝を集めて作ったビーバーハウス。きっと、餌を探して泳いでいるのでしょう。


これがビーバーハウスです!

ドームカーの人々もすっかりと顔なじみになってきました。眺めを見ている人、本を読む人、眠っている人、そして、トランプをしている人・・・と、時間の過ごし方も様々。皆表情は穏やかです。まさに、日常とは別世界!

19時半、夕食。今度のメニューはスープ、サラダの後のメインがまたもや3種類からのチョイス。子羊の香草焼、七面鳥のカツレツ、そして、鱒のフィレのムニエル。いつものように、これにベジタリアンメニューと子供用のハンバーガーがあります。KAY2は七面鳥、KAY1は鱒にし、グラスワインとビールを頼みます。

今回同席したのは、GCTとは別のツアーのご夫婦で、バージニア州からの Tご夫妻。ご主人の Dan は金属部品を販売する会社を経営していたそうです。奥さんの Evelyn とともにとてもフレンドリーでジョーク好き。今までの食事の会話でもっともジョークがはずみます。お子さんは音楽雑誌「ビルボード」の編集長をつとめていたとのことで、とても自慢のようです。二人のつけているツアーの名札は始めて見ます(プラスチックのプレートに名前が刻印。りっぱな物。きっと高級ツアーなんでしょうねぇ・・・)。いままで車内で出会っていないようです。不思議に思っていると向こうもそうで、「今まで出会っていないよね。もしかして、この食堂車より後ろの人?」と尋ねられます。彼らはこの食堂車よりも前で、通常はもう一つ前の食堂車で食事をしているのだそうです。今回だけたまたま後ろの食堂車を選んだようです。KAY1が医療に詳しいとわかると、「調子悪くなったら、食堂車を駆け抜けて後ろまで呼びに行くからね!」。うーん、冗談に聞こえない年齢なんですよねぇ・・・みんな。

いままで一緒になった人々と話してみると、皆ある程度の収入があり、社会的にはそれなりに功成り名を遂げた人々のようです。カナダ人の間では、この列車の旅は、そうした人々が楽しむ旅行なのでしょう。なんとなく僕らのような若輩者がこうしているのは申し訳ない気もします。実際、ジャスパー以降、子供達を除くと僕らがおそらく最年少なのです。

食事の後、またもや睡魔が遅い、KAY1はあえなくダウン。時計の針を1時間あらかじめ進めておくと、もうKAY2もぐに意識はなくなりました。


我々の車両から見た前方部。いやぁ・・・やっぱり凄い長さです!





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